ブログブログ by 友利昴

自分に関する記事を書いたものです。

宮古島、『オリンピックVS便乗商法』の感想、その他取材もろもろ。

所用でしばらく沖縄の宮古島に来ていました。うちのチワワも連れて行きました。JAL「ペットとおでかけサービス」というサービスがあって、ブルドッグフレンチブルドッグ(鼻腔の構造上気圧の変化を受けやすいらしい)以外のワンちゃんなどを空輸してもらえるのですが、そうは言っても心配じゃないですか。

実際どうだったかというと、本人は行きはそれなりのストレスがかかっていたようで、宮古空港では不安そうな表情で汗をかいていましたが、着いてからは元気いっぱい。帰りの飛行機は結構慣れていたようでした。よかった~。今回、犬と泊まれるホテルとしてホテルブリーズベイマリーナのドッグルームに泊まったのですが、部屋に広いケージ、トイレシート、トイレシート用の匂いの漏れないゴミ箱等もついてて、テラスからすぐ外に出て浜辺を散歩できるなど、かなり快適でした。下記は違う場所伊良部島の浜辺ですが、いい感じの写真を添付しますね。

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伊良部島の浜辺にいるうちのチワワ

さて拙著『オリンピックVS便乗商法―まやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘』(作品社)はおかげさまで発売一ヶ月となり、ご感想をもらうことも多く、ご好評をいただいています。「丹念に調べられているが読みやすい」という、狙い通りのご感想が多く、ほっとすると共に嬉しく思います。

この本、書店では「法律」のコーナーにあることが多いです。こんな時代なので置いていただけるだけでもありがたいですが、「社会・ノンフィクション」のコーナーとかに並んでるときもあって、そっちの方が嬉しいしマッチしていると思いますね。「法律」でも全然大丈夫ですけどね! あと「スポーツ」のコーナーに並んでいる時もありますね。『プリズナートレーニング』『超・筋トレが最強のソリューションである』などの隣にこの本が並んでると、我ながらギョッとします。せっかく書いたので、多くの人に届いて欲しいと願います。

そして、本書に関して、GMOブライツコンサルティングウェブマガジン「BRAND TODAY」で取材を頂いています。ブランドや商標に関して、単なる法律情報ではなく、独自で新鮮な視点の記事を掲載している媒体に出れて嬉しいですね。2回連続の掲載です。なお、この記事が載ったことをTwitterFacebookで投稿した際、ヒョウ柄のジャケットを着て行ってしまいました」と書いたんですが、正しくは花柄でした。訂正してお詫び申し上げます……ってどっちでもいいよ。ちゃんとした服を着ろ。 

<著者:友利 昴先生> 「オリンピックVS便乗商法」から学ぶ、自身で考え判断できるバランス感覚を(前編) – BRAND TODAY

<著者:友利 昴先生> 「オリンピックVS便乗商法」から学ぶ、2020年東京オリンピックをより楽しむために(後編) – BRAND TODAY

 

あとは今月は、『下町ロケット』の神谷弁理士のモデルとして知られる鮫島正洋弁護士の法律事務所、内田・鮫島法律事務所の取材に行ってきました。

で、ごめんなさい!僕『下町ロケット』はまだ小説も読んでないし、ドラマをチラ見したことがある程度なんです。それを踏まえて言わせて頂きますと、鮫島先生は下町調でロケット調の闊達な弁護士で、他の弁護士さんのポリシーもクリアで、取材していてとても楽しかったです。記事広告なので、記事ではロケットな表現は抑えましたが、実際頼りになる事務所なのだろうなと思います。発売中の「ビジネスロージャーナル」2月号別冊の「Lawyers Guide 2019」に収録されていますので、よかったらあわせてチェックしてみてくださいね。

右から『ワン・ネコ ペットと泊まれる宿』、『オリンピックVS便乗商法―まやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘』、「Lawyers Guide 2019」が付録になっている『BUSINESS LAW JOURNAL』2019年2月号。

『オリンピックVS便乗商法―まやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘』目次・小見出しを一挙公開!

友利昴『オリンピックVS便乗商法―まやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘』の目次、小見出しを一挙公開いたします。

本書全体としては、オリンピック組織が推進する「オリンピックにまつわる表現に対する規制」(アンブッシュ・マーケティング規制)の是非オリンピックと便乗商法との攻防について書いています。

日本だけでなく世界各国の具体的事例の紹介(第1章)、その背景(第2章)、法的な位置づけの整理(第3章)、法律を超えたオリンピック組織の規制テクニックの紹介・変遷・そして対抗策(第4章)、オリンピックを保護するための法律の実態とその是非(第5章)、1964年東京オリンピックの時にも存在した表現規制問題の掘り起こし(第6章)、と盛りだくさんな内容になっています。できるだけ事例中心で、理解・イメージしやすい筆致を意識しています。以下、目次をご覧ください。

 

まえがき――応援し、祝福していただけなのに、ある日突然クレームが来る?  

第1章:便乗商法―アンブッシュ・マーケティング―とは何か 
スポーツイベントに乗じた盛り上がりが規制される/オリンピックの成功を祈ったら処罰/SNSでオリンピックについてつぶやくのは禁止/スタジアムに広告を持ち込めばガムテープでぐるぐる巻き/アンブッシュ・マーケティングの誕生/非スポンサーがスポンサーに仕掛けた広告戦争/アンブッシュ・マーケティングは「寄生虫」だ/1996年―アンブッシュ戦争勃発/ジェリー・ウェルシュの敗北/進化した確信犯型アンブッシュ・マーケティング/確信犯はクレームに屈しない/無用なトラブルを避ける日本企業/ボランティアの豚汁も禁止/善意を踏みにじるアンブッシュ規制

コラム(1):スタジアムはガムテープだらけ? クリーン・ヴェニューの原則 

 

第2章:なぜアンブッシュ・マーケティングを規制するのか 
「スポンサー的な問題」とは何か/スポンサーがいないとオリンピックはできない/「一業種一社契約」という劇薬/スポンサー特権への恨みがアンブッシュ・マーケティングを生んだ/一業種一社契約のパラドックス/「オリンピック選手にパンを売るな」と言えるか/スポンサーの独占権を守るという決意/知的財産権侵害という印象操作/「ご注意ください」と「許されません」/オリンピック憲章は「憲法」か

コラム(2):もうひとつの収入源「放送権者」への過剰配慮 

 

第3章:知的財産権でオリンピック資産は独占できるか 
聖火リレー著作権で保護できない/オリンピック・シンボルは著作権フリー?/買い取れなかったポスターの著作権/写真はいいが、動画をアップしてはいけない/ほとんど他人に取られていた商標権/「がんばれニッポン」の商標権を30万円で買い取れ/ニッポンを応援したら商標権侵害か/「TOKYO 2020」商標登録の不可解な経緯/応援うちわにオリンピック・シンボルは商標権侵害か/「がんばろう日本!」は商標権侵害か/「オリンピックを想起させるに過ぎない用語」は知的財産権では保護されない

コラム(3):オリンピックは普通名称か?(1) 

第4章:法を超えるアンブッシュ・マーケティング規制
ボーダーラインの「○○リンピック」/規制したいが法的に白黒つけられると困る/5つの円はオリンピック・シンボルの盗用だ!/オリンピック組織の警告パターン分析/警告への反論と受け流しのテクニック/世間の同情を集めてオリンピック組織に反撃/「『おめでとう東京』もアウト」の衝撃/オリンピック組織に忖度する広告業界/判断を放棄するJARO/オリンピック表現自粛ムード/レストランでブラジル料理も出せない/アンブッシュ=社会的な悪ではない/法に従わない者に従うことが無難なのか

コラム(4):オリンピックは普通名称か?(2)

 

第5章:アンブッシュ・マーケティング規制の最終手段
法律がないなら法律をつくればいい/ゲイ・オリンピック事件/オリンピック・シンボルと赤十字マークの違い/オリンピック保護条約の実態/アンブッシュ・マーケティング規制法の誕生/オリンピック連想権/なぜオリンピックだけを特別扱いするのか/オリンピックに来てほしければ、オレ様のための法律をつくれ

コラム(5):2020年東京大会とアンブッシュ・マーケティング規制法

 

第6章:1964年から学ぶ、アンブッシュ・マーケティングとの向き合い方
立法運動の胎動と、それを無視する社会/商魂の五輪マークへの攻勢を食い止める/矛盾する使用規制と資金調達/「よくわからないが、使用してもよいのではないか」/オリンピック組織に反発する広告業界/一足のラバーシューズが潮目を変えた/「女のパンティ」がスケープゴートに/年賀状にもオリンピック・シンボルは描かせない/「立法化はオリンピック・ムードを壊すおそれがある」/オリンピック保護法の廃案/使用自制は「お上が望んでいる」こと/JOC、訴えられる/自粛ムードはあったのか?/あっぱれ!「五ビンのマーク」/オリンピック・シンボルに拘泥しなくても/自粛と分別は違う/アンチ・アンブッシュ化する社会に向けて

あとがき――われわれは法を敗北させてはいけない

友利昴「オリンピックVS便乗商法―まやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘」

『オリンピックVS便乗商法』と合わせて読みたい『オリンピック・デザイン・マーケティング』

数少ない『オリンピックVS便乗商法』の類書をご紹介する第二弾。加島卓・著『オリンピック・デザイン・マーケティング―エンブレム問題からオープンデザインへ』です。

本書の主題は、サブタイトルから伺えるように、佐野研二郎さんデザインの、取り下げになった旧大会エンブレムにまつわる騒動です。
エンブレム騒動。当時知的財産業界からも声はあがりましたが、デザイン業界からの声は良くも悪くも拾われたのに対して、知財業界の声ってあまり響かなかったんですよね。僕はこの業界の末席に身を置く人間として「なんという存在感の低い業界だ」とガッカリした覚えがあります。知財業界の知見と常識からすれば、エンブレムに関しては潔白だろうと言えるわけですが、騒動における「潔白なはずなのに周囲をなかなか説得できない」という事態の顕在化は、知財業界にも課題を与えたものです。
それはさておき、本書は知的財産の観点ではなく、過去のオリンピックの大会エンブレムに目を向け、その社会的な位置づけの変遷を踏まえることで、この問題を捉え直そうという取り組みがなされています。まずこの視点が面白い。煽情的な炎上事件となった側面もあり、非常に現代的な出来事のように見えたこの騒動を、半世紀以上の歴史の流れの中で説明しようという発想が新鮮です。

その結論の要点を、僕なりにかいつまんで言うとこうです。

かつて「アート」のように捉えられ、作り手サイドも「作り方」を意識していた大会エンブレムが、80年代以降のオリンピックの商業化と前後して、広告や商品化などの横展開を前提とした「デザイン」(商業デザイン)としての完成度が求められるようになり、作り手も、エンブレムの「使い方」(使い勝手)を重視する方向に位置づけが変化していったという流れがあった。
その流れの中にあって、2020年東京大会エンブレムの作り手は、おそらく1964年大会への郷愁も手伝い、あの頃のようにエンブレムを「アート」として捉え、「作り方」を重視する雰囲気があった。つまり、ある意味、時代の流れに逆行したコンセプトでのプロジェクトだったということです。
こうした制作コンセプトだったがゆえに、「パクリ疑惑」が発生しても、作り手サイドは「あのエンブレムをどうやって作ったか」の説明に終始し、その結果「どう作ろうが結果として似ていた」事実の反証としては説得力を持たせることができずに疑惑を収束させられなかったし、選考過程においてはアート志向のデザイン関係者の意向が過度に尊重されたことで「出来レース疑惑」も生んでしまった……と考察されています。
うん、この考察は、エンブレム騒動を知財問題や炎上問題として捉えていては多分一生できないものです。これは興味深いパズルの解き方をしているな~という感想を抱きました。

拙著のテーマになっているオリンピック・シンボルの無断使用規制やアンブッシュ・マーケティング規制については、オリンピックの商業化の歴史を追う中で、その時代時代の新聞記事等を参照しつつ触れることで、規制の変遷について臨場感をもって言及されています。
唸ったのは、野老朝雄の手による新エンブレムとアンブッシュ・マーケティングの関係性についての観察ですね。ご存じの通り、新エンブレムは市松模様をモチーフとしています。これが何を意味しているかというと、明らかに誰の権利でも所有物でもない公有財産パブリックドメインである市松模様を上手に活用すれば、合法的に、かつかなり直接的に、新エンブレムに便乗(アンブッシュ・マーケティング)することができるということです。本書の記述を借りれば「新エンブレムがあって市松模様があるのではなく、市松模様があって新エンブレムがある。したがって、その気になれば誰でも新エンブレムっぽい表現をすることが可能」という状態なのです。
「元ネタがあるのではないか?」という疑惑が端緒となって取下げになった旧エンブレムに対して、新エンブレムは、元ネタが誰の目にも明らかな公有財産だったがゆえに、パクリ疑惑は起きにくくなったものの、逆に誰でも合法的に「パクりやすい」デザインになってしまった……。この皮肉めいた事象の指摘に、僕は震えましたね。
なお、新エンブレムは、組織委員会による審査を経て、最終4案については国民投票で選考されました。僕は、おそらく組織委の審査員も、投票した国民も、旧エンブレムの騒動にうんざりして、無意識的にそもそもパクリ疑惑の起きにくい案に目が行ったのではないかとにらんでいます。
なお、『オリンピックVS便乗商法』のカバーデザインが、僕のリクエストで「伝統的な藍染市松模様のモチーフ」を全面的に打ち出したのは、本書のこのくだりに強くインスパイアされたからであります。

ちなみに、ちょうど本書を読んでいた今年の2~3月頃に加島さんのトークイベントが開催されるというので、お邪魔したことがあります。加島さんは結構終始淡々と話す感じだったんですが、この市松模様のくだりは妙にテンションが上がってて、自分で話しておいて自分で笑っていたのがかなり印象的……というか共感しました。まぁアガりますよねこの状況には。
その割に、『オリンピック・デザイン・マーケティング』のカバーは別に市松模様じゃないのが謎です!(少しだけ使われていますが)

 

と、いうことで、「オリンピックの知的財産らしきもの」の正体について理解を深めるにあたっては、拙著『オリンピックVS便乗商法』前回『アンブッシュ・マーケティング規制法』『オリンピック・デザイン・マーケティング』。この3冊を読んでおけば完璧だと思います。それぞれ、この問題を異なる視座から論じているので、テーマに共通項があっても、内容や読後感はまったくカブらない!おすすめです。

友利昴「オリンピックVS便乗商法―まやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘」

加島卓「オリンピック・デザイン・マーケティング―エンブレム問題からオープンデザインへ」

 

 

 

見本が届きましたよ、『オリンピックVS便乗商法』の。

新刊『オリンピックVS便乗商法―まやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘』、発売時期が近づいております。せっかく久々の単行本も出るので、少し露出を増やそうと、色々と仕込んでいるところです。その結果、単行本の作業がすべて終わっているのに妙に忙しい……。でもがんばりますね。

11/21発売の法律誌『ビジネスロージャーナル』1月号では、4ページ寄稿しています。「法務研修のWHATとHOW」という特集のために寄稿した記事で、「めんどくさい」「正論」「対岸の火事」と言われがちな法務研修を、聞き手のハートに刺さるようにするにはどうすればよいのか、みたいなテーマで書きました。
特集は、このテーマで10人の論客……というか10人の実務家が思い思いに書き綴るという、なかなか面白い構成になっています。その中の一人に友人がおり、「友利に書かせれば?」と推薦してくれたものです。ありがたいですね。

オリンピックVS便乗商法_友利昴

で、上写真を見て頂きたいのですが、『オリンピックVS便乗商法』も著者用の見本が届きました。実物を手にすると、これが非常に良いですよ!!もちろん原稿自体は穴のあくほど読んでました(ていうか書いてました)けど、製本されたものを見るのは当然初めてなわけです。なので、手に取った瞬間、非常に他人事のような感想が出ました。

「分厚いな!」

と。まぁ実際は、いわゆる「鈍器になるほど」の厚さではなく、単行本としては規格内の厚さなんですけど、思ったよりも分厚くて読み応えがあります。値段、2,400円という、本屋で値札を見かけたら少し悩むと思う価格なんですけど、その価値ありだなこれは!と、これも他人事みたいな感想ですが……。あと、非常に装丁がきれいです。古の時代から伝わる日本の伝統的な藍染市松模様をモチーフにした(したがって、アレではありません!)このカバーデザイン。よく見ると、触ると、細かい加工もなされていて、これはぜひ手に取っていただきたいと思います。装丁のコバヤシタケシさんには本当に感謝ですね。おしゃれな装丁をたくさん手掛けていらっしゃるだけあってさすがです。

中身も、改めて通して読みました。読み応え、あると思います!ご期待ください。で、これ著述家あるあるかもしれませんが、あんなに何度も推敲して、何度も校正したのに、完成品を読むとすぐに誤植や間違いに気付くのって、あれなんなんでしょうね?本当不思議です。
一箇所、訂正なんですけど、全体からすると枝葉末節の部分なんですが、旧著作権法の団体名義の著作物の著作権保護期間に触れたくだりがあって、30年と書いたんですが、正しくは33年です。条文の本則上は確かに30年(第6条)なんですが、この法に附則がありまして、「第6条の『30年』は当分の間『33年』とする」(第52条)という趣旨の条文がくっついてるんです。読んだ瞬間に「あ、これ附則あったな」って思い出しましてね……。文章の主張内容的には大勢に影響はないのでよかったのですが……。重版時に直しましょう……。

それにしても、「は?何その附則?」って感じですよね。3年とか中途半端だし。この附則の件に限らず、旧著作権法と現行著作権法の端境期に保護期間がまたがる古い作品は、とにかく色々計算がややこしいんですよ。今や著作権は、誰にとっても大変身近な権利なのに、こんなに複雑な構成じゃダメだろう(現行法も含めて)、と私は思うわけです。と、人のせいにしてみました!

友利昴「オリンピックVS便乗商法―まやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘」