ブログブログ by 友利昴

自分に関する記事を書いたものです。

日本が登場する変な欧米映画シリーズ1『ガン・ホー』

『日本人はなぜ「黒ブチ丸メガネ」なのか』を書くにあたって、日本が登場する様々な欧米映画を観たんですよ。『カーズ2』、『インセプション』といったメジャー大作から、『悪魔の毒々モンスター 東京へ行く』『恋はハッケヨイ』『ベルリン忠臣蔵』といったカルト作。果ては日本未ソフト化の作品も、YouTube等を駆使して観まくった。

親本を書いていた2006年というのは、YouTubeが出始めたくらいの時で、未ソフト化の映画を観るためには秋葉原の輸入DVDショップに行ったり、輸入DVD通販サイトで取り寄せたり、かなり大変だった。それが、今や、未ソフト化の中でも特にマイナー作品も動画サイトで観ることができるのは、文筆家や研究家にとってはとてもありがたい技術の進歩だ。

たくさん観た映画の中には、知る人ぞ知るというべき隠れた名作がありまして、それを紹介しようと思います。

 

それが1986年公開の『ガン・ホー』(監督/ロン・ハワード、主演/マイケル・キートン)。オープニングが黒ブチ丸メガネ姿の日本人サラリーマンの絶叫から始まるという、まさに「本書へようこそ!」と言わざるを得ない作品だ。

本作は、不景気で荒廃したアメリカのある町が、日本の自動車会社の工場を誘致して町おこしをしようとする、というお話。そう、当時は日米貿易摩擦の真っただ中。日本車や電子部品がアメリカにバンバン輸出され、そのおかげでアメリカの国内産業が打撃を受けていた時代だったのだ。

町の失業者たちは、日本の自動車工場がわが町にやってくることで雇用が生まれ、「イエーイ!」と喜ぶが、ラジオ体操を強要され、遅刻・早退は一切認められず、サービス残業を強いられ辟易。「会社が第一、休日出勤当たり前!」を地で行く日本企業のやり方に、ほどなくキレはじめる(しかし、こんな会社、今の日本においてはブラック企業認定だろう)。

「日本人は理解不能、人間じゃねぇ」となじるアメリカ人。

アメリカ人は怠け者。そりゃ、負け組にもなるわ」と嘲笑する日本人。

……これ、どっちの国民が観ても気分悪くないか?

だが最終的には、主人公の労使調停係のアメリカ人と、日本人工場長がお互いを理解し合い、やがて日米両社員の心にも変化が…という「いい話」に仕上がっている。価値観や立場の違う者同士が、分かりあうためにはどうすればいいのだろうか? この映画のように、酒を飲んで、一発殴り合って、抱き合うことだろうか? だとすれば相当ベタ過ぎるけれど、意外にこれが真理かもね。

とはいえ、当時のアメリカ社会は、ジャパン・バッシングと呼ばれる日本批判が巻き起こっていた時代。製作者の日本に対するイジワルな視点も垣間見える。本作に出てくる自動車会社は、「アッサン自動車」という。これは、日産自動車のパロディであろう。セリフや看板では"ASSAN MOTORS "と表記されているが、一瞬だけ漢字表記が映る。アッサン社員一同が、自家用機ならぬ自社用機(そんな会社ある!?←トヨタにはあるらしい。さすが…)に乗ってアメリカに上陸。その機体には、ハッキリ「圧惨自動車会社」などと書いてあるのだ。

圧惨……。わざわざこんな漢字選んだのか。漢字の意味を知ってないとこんな気の利いたブラックな造語つくれないだろ。この他、変な日本人描写は観てもらうしかない。飛行機から降りて靴を脱ぐ、その辺の川で皆で行水、草野球で全員送りバント……すごいですから。 

日本人はなぜ「黒ブチ丸メガネ」なのか (空想科学文庫)
友利 昴 近藤ゆたか
4840143145

ガン・ホー [DVD]
B001CSMGU6