「これは日本のアニメだから、観ようとは思わない」
アメリカの映画評論家ロジャー・イーバートが、『崖の上のポニョ』の批評において紹介した、同作品についての「幾人かのアメリカ人の意見」だ。
ガーン!とショックを受けた。クールジャパンと呼ばれる日本のコンテンツ、その象徴たる日本のアニメ、しかも、あの「世界の」宮崎駿監督のアニメが、「日本のものだから」という理由で観ようとも思われないとは、いったい、どういうこと……?
『日本人はなぜ「黒ブチ丸メガネ」なのか』、第四章「クール・ジャパンは本当か」は、そんな疑問から書き始めた原稿です。
アメリカにおける日本製アニメの営業成績や、その評価、売り場の様子を調べてみると、AnimeとAnimationの間にそびえたつ、ある大きな壁が見えてきた……。
その壁を突き崩すかのように、2000年代以降、映画会社は、日本のアニメやマンガを原作とした映画の制作に乗り出し、いくつかは公開されました。アニメ会社は、日本のアニメの放映権を買い付け、アメリカでの放送を目論みました。
しかし、アメリカ人の価値観や、厳しい放送倫理基準にムリヤリ合わせようとしたために、アメリカにおける日本のアニメは、とんでもない迷走を始めてしまった……。
という内容です。どんな迷走かは、読んでいただきたいわけですが、中でも迷走しすぎて逆にオススメなのが実写版『ドラゴンボール EVOLUTION』ですね。ちょうど公開当時、集英社の方と話す機会があって、「スゴいですね、ハリウッド。週末観に行こうと思ってるんです!」と期待を述べたところ、「いやぁ……ものすごく時間をかけたんですが……ハハ……」と言われた時の渋い顔が忘れられない。
原作の出版社にそこまで言われて、観ないわけにはいかない。
そうしたら、オープニング早々、孫悟空がじっちゃん(悟飯)に「どうしたら女の子とアガらずに話せるか教えてよ!」とすがりついており、正気を疑った。それは、(初期の)ヤムチャのキャラでしょうが!渋い顔もするはずだ。
参考文献では、パトリック・マシアス氏の『オタク・イン・USA』(太田出版)がよかった。読めば、ジャパン・コンテンツとアメリカン・カルチャーの溝を埋める作業が、いかに昔から難儀だったかが分かる。中でも、70年代にマテルから出たゴジラの玩具は出色の出来だ。顔が全然似ていない上に、ロケットパンチで腕が飛ぶ。ゴジラを何だと思ってるんだ。YouTubeに当時のCMがあったので紹介したい。
まだ売っているならば欲しい。
日本人はなぜ「黒ブチ丸メガネ」なのか (空想科学文庫)
友利 昴 近藤ゆたか
ドラゴンボール EVOLUTION(特別編) [DVD]
オタク・イン・USA:愛と誤解のAnime輸入史 (ちくま文庫)
パトリック・マシアス 町山智浩