ブログブログ by 友利昴

自分に関する記事を書いたものです。

著者は本当は日本人では?『ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上1』

ヘンな日本描写満載のツイッター・ニンジャ小説『ニンジャスレイヤー』が盛り上がっている、という話を知ったのは、『日本人はなぜ「黒ブチ丸メガネ」なのか』が発売になったちょっと後だった。

ツイッター版はずいぶん先にいっちゃてるみたいだったので、今般エンターブレインから刊行された書籍版を購入。読んだところ、これは、確かに、スゴい。

一番の特色であり、また魅力は、言葉選びの妙だ。

ボスから指令を受けて「ハイ、ヨロコンデ!」と応える部下のニンジャ。笑笑の店員なのか?これから殺し合うのに必ず「ドーモ、○○ニンジャ=サン」で始まる挨拶。時折挿入される日本のことわざや故事成語は、どれも絶妙に使い方が間違っている。こんなのがゴロゴロあってめちゃめちゃ書きたいのだが、間違いなくツッコミを入れながら楽しむ本なので、先にその楽しみを奪っちゃ野暮でしょうこれは。ぜひご一読を。

強調したいのは、本書が、従来のカン違いニンジャ映画等とは一線を画しているという点だ。

バイオレンス満載で、クリーチャー的でもあるニンジャ像は、エリック・ヴァン・ラストベーダーの『ザ・ニンジャ』からはじまる古典的なカン違いニンジャ・イメージを受け継いでいると言えなくもない。しかし多くの描写において、カン違いのレベルをとうに飛び越えている。

たとえば、文中、「カチグミ」と呼ばれる富裕層のサラリーマンがゲームに興じるシーンだ。

「カチグミ・サラリマンは組織の和を重んじるため、このような場においては、できるだけ均等な成績になるよう互いに気を遣わねばならない。万が一、二人のスコア差が10:0だったら、10を得た方は社内やネット上でムラハチにされるのである。ムラハチとは、陰湿な社会的リンチのことだ」―『ニンジャ・スレイヤー ネオサイタマ炎上』より

これは、カン違いというより、日本のサラリーマンのステレオタイプをさらに皮肉たっぷりにディフォルメした表現だろう。日本の文化や社会に無知では書けない代物だ。外国人のカン違いニッポンを、敢えて世界観として構築して、その上で物語を展開させているのだ。この点、『燃えよニンジャ』『アメリカン忍者』『クラッシュ・of・ザ・忍者』などのただカン違いしている作品とはまったく異なる性質を持っている。

著者はブラッドレー・ボンド、フィリップ・ニンジャ・モーゼズの二人のアメリカ人となっているが、こうなると本当にアメリカ人が書いているの?という疑問がわいてくる。

日本に関する知識が富み過ぎているし、え、これ原文ではどうなってるの?と思ってしまう表現が少なくないのだ。たとえば、ネオンや看板のヘンな日本語は、あれは英語表現を直訳するからヘンになってしまうことが多いんだけど、だとすれば、原文の時点ではそんなにヘンではなかったはずなのだ。実は最初から日本語の作品だったりして……いや、この件にこれ以上深入りするのはやめよう。さもなくば、ソウカイヤ・エージェントの手によって、トコロザワ・ケバブのようにターンテーブルの上でクルクルと回転する羽目になってしまう。ナ、ナムアミダブツ!

日本人はなぜ「黒ブチ丸メガネ」なのか (空想科学文庫)
友利 昴 近藤ゆたか
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ニンジャスレイヤー(14) ~ネオサイタマ・イン・フレイム(ニ)~ (角川コミックス・エース)
余湖 裕輝 田畑 由秋 ブラッドレー・ボンド+フィリップ・N・モーゼズ

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ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上 (1)
ブラッドレー・ボンド フィリップ・N・モーゼズ わらいなく
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