外国映画には、LとRの発音の使い分けができない日本人が登場することがある。これはしばしば「日本人をバカにしてる?」と思われることがあるが、実際はどうなのだろう。
LとR描写で、揶揄的な意図が感じられる作品には、スピルバーグ監督の『1941』('79)がある。真珠湾攻撃後間もない時期のカリフォルニアを描いたコメディ映画だ。いつまた日本軍が攻めてくるかもしれぬと、アメリカ軍は爆撃機の整備にいそしむ。ある爆撃機のハッチが開くと、そこには「So Solly」と落書きされた爆弾が映る……というシーンがある。正しいスペルは「So Sorry」で、これはちょっと皮肉が入っている。
日本の開国期を描いた『黒船』('58)では、アメリカ人が、芸者にdollar(ドル)の発音を教えているが、全然できない。最終的には「日本人はLの発音ができません」と言い切られている。
スパイコメディの『オーバー・ザ・レインボー』('81)にはこんなシーンがある。レストランで、スパイが「the pearl is in the river(真珠は川の中)」という取引相手の暗号を待っている。そこに、あるマダムが真珠をチキン・レバーのパテに落としてしまった。それを見つけた日本人観光客が、「The pearl is in the liver(奥さん、真珠をレバーの中に落としましたよ!)」と叫んだところ、彼はスパイに取引相手と間違えられてしまう。liverの発音が悪くてriverに聞こえたのだ。
『ロスト・イン・トランスレーション』('03)では、日本女性に「Rip my stocking(ストッキングを破いて!)」と言われたアメリカ人俳優が、「唇(Lip)を……どうしろって?」と困惑。翌日のCM撮影では、ディレクターから「ロジャー・ムーアみたいな感じでやってくれ」と言われて、「ロジャー(Loger)・ムーアって……誰?」とまたも困惑している(Roger Mooreが正解)。
こうした描写は、揶揄というより、言語ギャップをネタにしたギャグと言えるだろう。われわれがカタコトの外国人タレントを可笑しむのに近いかもしれない。
しかし、このように映画のネタになるほど、実際われわれのLとRの発音は紛らわしいのだろうか。
セレブタレントのケリー・オズボーンは、イギリスのテレビ番組『ケリー・オズボーンの私は日本人になる』('07)の企画で日本に滞在しているが、このとき日本人の英語の発音について、以下のコメントを残している。
「日本人は、LもRも発音できるわ。だけど、毎回必ず逆なのよ!」
ええっ、そうだったのか!? じゃあこれからは、思った発音と逆の発音で会話すればいい……って、それができれば苦労しないか。
日本人はなぜ「黒ブチ丸メガネ」なのか (空想科学文庫)
友利 昴 近藤ゆたか