ブログブログ by 友利昴

自分に関する記事を書いたものです。

和解してくれてホッとした!「白い恋人VS面白い恋人」裁判

ここ数年で最も注目していた裁判が、和解で終結した。「白い恋人」のパロディ商品として、よしもとクリエイティブ・エージェンシーが企画開発した「面白い恋人」が、本家「白い恋人」の石屋製菓から、商標権侵害や不正競争防止法違反で訴えられた裁判だ。

両社がプレスリリースで発表したところによると、和解内容としては、「吉本側は、『面白い恋人』の商品名はそのままに、パッケージを『白い恋人』と紛らわしくないデザインに変更する」「『面白い恋人』の販売地域は近畿圏に限定する」というのが大まかなところのようだ(参照:2013年2月13日の石屋製菓プレスリリース[PDF]、同日の吉本興業プレスリリース[PDF]。この和解内容、どっちの顔も立つベストな内容で、絶妙な采配だと思う。

この裁判が和解で終結してくれて本当によかったとホッとしている。著作物以外のパロディの是非について、日本で争われた裁判は珍しいと思うが、判決が出ることによって、その白黒がある意味ハッキリしてしまうのは避けたかった。

面白い恋人」のような楽しいパロディが許容されない社会というのは本当につまらないと思うし、一表現者の端くれとして、表現の自由はなるべく保障されていてほしいと思う。一方で、石屋製菓の、自身のブランドを守り抜く態度にも、一知財マンの端くれとして、大いに共感するところだ。もし、自分のところのブランドが大々的にパロディされたら、訴えるかはともかく問題視はするだろう。つまりどっちの気持ちも分かりすぎるくらい分かるし、判決がどっちに転んでも困るのだ。

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去年大阪に行った時に買った「面白い恋人」。おいしかったです。

 「無断のパロディはダメ!」あるいは逆に「パロディは適法である!」なんて指針がでると、邪魔でしょうがない(本来は、一個判決が出たからといって、なんでもかんでもそれに縛られなきゃいけないというわけでもないが、実務上、影響は受けざるを得ない)。こういうものは、ブランドの重要度や、当事者の考え方、パロディの程度や必然性、影響力などの諸々の要素を総合的に考え、個別の案件ごとに、ケースbyケースで柔軟に判断すべきだと思う。そして実務者としては、ケースbyケースで適切な判断ができるような判断力を養うべきだと思う。

 前例のないグレーな事件で判決を出すのは、裁判官としても避ける傾向がある(特に今回の裁判長は、知財高裁の判事の経験もある人のようなので、地裁とはいえ安易に木槌を振れなかったのだと思う)。しかし、もし判決が出ていたら、多分控訴されるから、あれよあれよと立派な判例になってしまってもおかしくなかった。真理に固執したり、勝負に意地になって判決もらっても、実は(学問的好奇心は満たされるものの)実利はあんまりないことも多いのだ。

 また今年も夏前に大阪に行く予定がある。そのときは、新しいデザインの「面白い恋人」を、ぜひ買ってみようと思う。なお、吉本興業さんには、ぜひ姉妹品として「黒い交際」というチョコを出してもらって、島田紳助の話を蒸し返してほしいと思います。そっちの方が笑えると思うんですがどうだろう。ダメか。 

へんな商標?2
友利 昴 和田ラヂヲ
本書でもこの事件は取り上げています。
友利昴

白い恋人達
桑田佳祐 古賀紅太(桑田佳祐)&His Friends
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