正月映画はやはり古典的王道を観たいということで、『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』をチョイス。1985年作品なんですが、物語の舞台となった未来世界がなんと2015年。来年だったんですね(来年の正月に観ればよかったか?)。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が描いた未来をまさに越えんとしているこの時代に、結構興奮しています。鉄腕アトムが生まれた2003年以来の感情ですね。
劇中で描かれている未来と、現実の2014年にはかなりギャップがあって面白い。中でも注目したいのが日本観。劇中の2015年アメリカでは、日本が幅を利かせており、マイケル・J・フォックスが勤める会社の上役は日本人なんですね。ちなみに彼に与えられた役名は「伊藤富士通」。およそ人の名前とは思えないよ。愛社精神が強すぎて、会社と同じ名前に改名しちゃったのか!? アメリカ人にたとえれば「マイクロソフト・ゲイツ」みたいなセンスなんだが、その辺りまで気が回らなかったんだろうね。
1985年といえば、日本企業がアメリカにどんどん進出し、日本車をはじめとする日本製品がバンバンアメリカに輸出されていた時代。この勢いのまま、アメリカの経済界は日本に侵攻されるのでは……という思いが反映された未来観、日本観だったのはないでしょうか。そういえば、同時に『ゴジラVSキングギドラ』も観たんですよ。これは1991年の日本映画なんですが、やはりタイムパラドックスを描いた作品で、こちらはバブル期における、日本人による日本の未来観が現れていて面白い。
ストーリーによると、バブル期の勢いそのままに経済成長し続けた日本は、やがて、赤字国家の国土を次々と買収し、2204年にはアメリカ、ロシアに劣らぬ国土を手中とする超大国になっているというのだ。これはもう、アジア、中東のほぼ全域を買ったとしか思えない。新世紀の侵略は、武力によってではなく、金によって実現されていた!
さらに興味深いのは、劇中で語られたもうひとつの日本の未来図だ。それは、21世紀にゴジラが日本中の原子力発電所を襲い、核汚染によって滅亡の危機に瀕するというものだ。
おそらく製作者としては、経済超大国化も、核汚染による国力衰弱も、日本の未来図としてどちらの可能性もあると感じていたのではないだろうか。その後の「失われた20年」を経て起きた311以降の情勢に鑑みると、結果的に後者の未来予想図の方に妙なリアリティが感じられるのが興味深い。
20年を経て、20年前に人々が描いていた「日本の未来観」の答え合わせができる。けっこうロマンチックな体験だ。さて、今年の日本はどうなるか。いったいどんな「日本の未来観」を描かせてくれるのだろうか。
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大森一樹