先日、雑誌の取材で手塚プロダクションに行って来ました。『ブラック・ジャック』、『鉄腕アトム』をはじめとする、手塚治虫作品の版権管理などを行っているあの手塚プロです。海外展開や二次創作などについて色々とお話を伺ってきました。
手塚プロさんは、伝統的なプロダクションの中では非常に翻案、二次創作に寛容、と言うと語弊がありますが、二次創作に積極的、という特徴がまず頭に浮かびます。大胆なリメイク企画・作品が多いことから来るイメージなんですけどね。そう思うのは私だけではないようで、以前行ったある漫画関係のイベントでは、某大手出版社の編集者が「手塚プロは著作権を放棄しているから何やっても自由」と言い放ってましたからね…(注:放棄してません)。それ聞いたときはさすがに「おいおい」と思いましたが。『ブラックジャックによろしく』と間違えてるんじゃないのかとか(笑)(注:佐藤秀峰さんも放棄はしてません)。とにかくそのくらい、二次使用に対しておおらかなスタンスを採っているのかな? そして、そうだとすればそれはなぜ?と、気になっておりました。
ところで手塚作品といえば、僕は後期から晩年に描かれた青年向け作品が大好きなんですよ。『奇子(あやこ)』(1972)、『人間昆虫記』(1970)、『ネオ・ファウスト』(1988)あたりがベスト3です。複雑に張り巡らされた数々の伏線がドラマを紡いでいて、確かに天才のなせる業だなと感嘆します。古い作品だけど今読んでも完全に面白いですよ。
取材時に、そんな自分の想いも先方に伝えたところ、「でも手塚は、死ぬ直前まで『漫画家っていうのは少年誌に描かないと意味がない』と言っていてね」とのこと。へぇーっ。あんなに面白いし評価もされているのに……。
なんでも、「漫画は子どものためのもの」という持論をお持ちだったらしく、子どもにメッセージを送り続けていたいという想いを抱いていたとのこと。
今回の取材、とても楽しく、学ぶところが多かったです。普段、昼間は昼間の仕事があるので、取材やルポルタージュ的な活動はあまりできないのですが、こういう活動は自分の見聞を広め、経験を豊かにしてくれるものだと実感。チャンスがあればまたやりたいですね。
奇子《オリジナル版》 上
手塚 治虫
THE INVENTION (ザ インベンション) 発明 2014年 12月号 [雑誌]