ブログブログ by 友利昴

自分に関する記事を書いたものです。

音や色の商標を出願したことを自分で言いふらす戦略はアリなのか?

いわゆる「新しいタイプの商標」と呼ばれる商標の出願受付が、この4月からついに日本でも始まった。音、色、位置、動き、ホログラムによる商標の出願が受け入れられることになったのだ。

これらの商標は、普通の文字やロゴの商標とは異なり、登録するためには長年の使用実績や著名性等が求められることが多い。裏を返せば、登録されれば著名性や高い認知度の裏付けとなるため、「ブランド力の証明とPR」を目的として、登録を目指す企業は少なくない。

日本ではどのくらい出願されるか未知数だったが、フタをあけてみると、一週間で500件以上も出願があったようだから、思ったよりずっと盛り上がっていると思う。興味深いのは、出願したことを自ら言いふら……報道発表する企業が複数出てきたことだ。

出願受付の前日に報道発表(プレスリリースは当日)した大幸薬品を筆頭に、久光製薬江崎グリコセブンイレブンタカラトミー、エンジニア、東レ……。これは気合いの現れなのだろうか。

 《参照:商標法改正で「音」「動」「色」出願続々(産経WEST)

先に述べたように、そもそも「ブランド力のPR」を目的とした出願が大半だろうから、報道発表を上手く活用することは戦略として大正解ではある。そして、世間一般的には「商標出願中」「特許出願中」もそれなりのインパクトを持って受け入れられるのだから、ニュースバリューのある内に発表することには意義があろう。

しかし、登録になってこそ「ブランド力」である。出願なんか誰でもできる。登録可否を決める高ハードルの審査はすべて今からなのである。これで登録にならなかったらカッコ悪いぞキミたち。それどころか「結局登録が認められませんでした」ではブランド力のマイナスアピールにもなり得るだろう。

そもそも、単なるメロディや単純な色彩の使用を、特定の一企業に独占されては困ると考える同業者は多いはずだ。そんな同業者たちは、このニュースに接して何を思うだろうか。実は、自分の気に食わない商標が誰かに出願されたことに気付いた際には、誰もが特許庁に対して「その商標は登録しないでくれ」と情報提供や異議申立をすることができる。

そうした同業者の動向に想像力を働かせれば、出願人自ら、大手メディアという巨大なメガホンを使って「こんなの出願しました!」と早速言いふらすことは、戦略としてちょっといかがなものか。情報提供や異議申立の動機とチャンスを日本中の同業他社に与えているようなものではないか。喧伝するなら登録になってからではないか。

「♪ヒ・サ・ミ・ツ」や「♪グ・リ・コ」の歌詞が入ってるメロディのように、独占されても誰も文句を言わない商標であれば問題はないだろう。しかし……そうじゃない音や色を出願している皆さん、時期尚早な自慢は、誰かに足元すくわれるかもしれないよ。

それどんな商品だよ! 本当にあったへんな商標 (文庫ぎんが堂)
友利昴 和田ラヂヲ
4781670970

新しい商標と商標権侵害―色彩、音からキャッチフレーズまで
青木 博通
4417016542