ブログブログ by 友利昴

自分に関する記事を書いたものです。

「TOKYO 2020」を許可なしに使ったら商標権侵害か?

「TOKYO 2020」という言葉を許諾なしで使ったピンバッジを販売した愛知県の男が、商標法違反の疑いで逮捕された。容疑者は「『TOKYO 2020』が商標だとは思わなかった」と容疑を否認しているという。

www.sankei.com

 

知的財産権侵害で逮捕される人は、「『○○』が商標だとは思わなかった」「権利があるとは思わなかった」という言い訳をよくしますね。しかし、商標権や特許権等は一応公示されているという理由で侵害時には過失が推定されるため、この手の言い訳は原則として通用しません。

しかし「TOKYO 2020」である。地名と年号である。さすがに「商標だとは思わなかった」という意見にも一理あると言わねばならないでしょう。地名と年号の組み合わせは、通常は商品の販売地や販売年等を表す普遍的表現であるため、特定人の独占には適さず、商標登録が認められないのがセオリーだ。

なのに特許庁は、東京オリンピックの開催が決まった約一ヶ月後には、すんなりと、十分な検討もなしに、しかもあらゆる商品についてこの商標の登録を認めてしまったのである。バッジはもちろん、ろくろ、ロケット、原子炉、人工授精用精液といった商品に至るまで、「TOKYO 2020」を商標として使えるのは、権利上は大会組織委員会だけになってしまったのだ。正直、かなり有効性に疑問のある商標権で、まともな権利行使に耐えられる権利とは言い難い。

今回の容疑者は、押収された商品を見る限り、「まとも」な商標権である五輪マーク、招致エンブレム、大会エンブレムも無断使用しており(下写真)、オリンピックへのフリーライドの意思は明らかで、かつ先の報道によると「組織委員会から警告を受けたにも関わらず販売を続け」ていたということだから、刑事告訴が受理されやすい悪質性は備えていたといえるでしょう。その点を踏まえて、組織委員会は思い切って「TOKYO 2020」の商標権侵害を前面に出して告訴したのではないでしょうか。

 

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日テレNEWS24「『TOKYO 2020』商標めぐり初摘発」2017年6月15日

 もっとも、一般論としては、「TOKYO 2020」の商標権侵害を疑われたら、「そもそもこの商標権は無効だ」、あるいは「権利の濫用だ」などといった反論も十分考えられる。だいたい、「『TOKYO 2020』という言葉を許諾なしに使ったら逮捕された」という文章は冷静に考えたらめちゃめちゃだ。地名と西暦の組み合わせだぞ。2020年にTOKYOで開催されるイベントは当然オリンピックだけではない。「TOKYO」+「西暦」を使ったイベントやらグッズなんて五万とあり、組織委員会以外がその事実を表現できなくなるほど商標権は万能ではないのである。

結局「TOKYO 2020」の使用が罪に問われ得るのは、せいぜい今回の事件のように、明らかにオリンピックグッズの偽造品を売るような相当限定的なケースに限られるでしょうし、それ以前に商標権が無効化される余地もあるでしょう。いや、そのくらい、この商標がしれっと登録されていることは疑問なんですよ。

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