ブログブログ by 友利昴

自分に関する記事を書いたものです。

友利昴『オリンピックVS便乗商法―まやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘』の趣旨、楽しみ方

新刊、友利昴『オリンピックVS便乗商法―まやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘』の趣旨や楽しみ方について、著者よりご説明申し上げます。

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最近、事業者の間で「オリンピック」が禁句になっているのをご存知ですか?

勝手にオリンピックの成功や選手の活躍を祝ってはいけない……どうやらそんなルールがあるらしく、これを破ると大会組織委員会からクレームがつく……そんな噂がまことしやかに流れています。冬季平昌オリンピックで、日本代表選手の所属校や所属企業が、公開形式の壮行会を急遽相次いで自粛した混乱を覚えている方も多いでしょう。

事業者によるオリンピックの盛り上がりに乗じた広告やキャンペーン、あるいはオリンピックへの言及について、オリンピック関連組織はこれらを「アンブッシュ・マーケティングという言葉で括り、あの手、この手で規制しようと画策しています。

しかし、こうした「ルール」や「クレーム」に、本当に根拠はあるのでしょうか? オリンピックの長い歴史の中で、どのようにして「ルール」が形成されていき、実際にどんな「クレーム」が行われ、人々はどのように応じてきたのでしょうか。

その経緯を、国内外の具体的なトラブル事例をなるべく多く取り上げることで探っていき、そこからオリンピック組織の主張するルールやクレームに対し、社会はどのように向き合うべきなのかを考察したものです。

いかにも巨大で公的機関のように見える組織が、法律や知的財産権の存在をほのめかしながらクレームをして来たら、それが「正しい」と思ってしまうのはある意味自然な感覚です。あるいは、実際に正しいかどうかイマイチ分からなくても、「従うことが正しい」と忖度してしまう気持ちも分からなくはない。でも、自分なりの分別、リテラシーを以って判断するとしたらどんな世界が広がるんだろう。そんなことを考えるきっかけになると嬉しいです。

あと、オリンピック組織の規制戦術はとても巧妙ですが、アンブッシュ・マーケティングに関する主張自体は基本的にむちゃくちゃなものが多いので、事例を丁寧に検証すると面白いんですよコレがね。単純にその巧妙さにうなり、面白さにもだえるのもまた一興です。

そんなこんなでこれまでの著作の中で最長のボリュームになりまして、全約20万字、引用図版60点以上の大作となりました。疲れた~。