ニュースなんかで、社会問題になっている事象や、不祥事を起こした人が取り上げられたとき、ゲストやVTRで弁護士が登場して「〇〇法に違反する可能性がある」「〇〇万円以下の罰金刑になるおそれがある」などと解説することがある。
それを見るたびに思うのだ。
「おい、弁護士だったら弁護しろや!犯罪の嫌疑をかけられている人を弁護するのがアンタらの本分やろがい!!」と。
そうなのである。どうも嫌疑されている人に対して「いや、この人は叩かれてますけど、こういう法律上の救済事由があるから何も悪くないんですよ」などとメディアで庇ってくれる弁護士はほとんどいない、ような気がするのだ。
そんな素朴な疑問からお送りする今回の記事は、「知財系 もっと Advent Calendar 2020」の提供でお届けしています。
《目次》
- 1.なんで先生はそっちの肩を持つんですかね?
- 2.識者はどっちの味方をしている?—集計結果と分析
- 3.個々のコメント傾向(齋藤理央弁護士と福井健策弁護士)
- 4.まとめ―有識者の「主義・思想」をどう受け止めるか
- 5.分析生データ
1.なんで先生はそっちの肩を持つんですかね?
知財トラブルではどうだろう。権利侵害、無断使用、パクったパクられた。そんな事件や騒動がメディアで取り上げられ「知的財産権の問題に詳しい〇〇さんの見解は?」などという切り口で弁護士や弁理士などが取材に応じることがある。
知財トラブルでも警察が動く刑事事件になることもあるが、これは違法性が明らかな典型的な模倣品事件が多く*1、わざわざ専門家の見解が問われる機会は少ない。
議論の的になりがちなのは、侵害被害者(権利者)と権利侵害者(利用者)の当事者が直接争う事件だ。この場合、当事者は警察・検察と被疑者という関係ではないので、どちらの弁護をしてもいいはずだ。だがメディアに登場する知財の専門家は、だいたいどちらかの立場に立ってコメントしている。ここで疑問が生じる。「なぜ、そっちの肩を持っているのだ?」と。
優秀な専門家であれば、やろうと思えばどちらの弁護もできるはずだ。特に弁護士はそれが仕事である。たとえ明らかに違法でとても無罪とは言えなくとも、違法性を減じる方向でコメントすることだってできるだろう。
それなのにどちらか一方の肩を持っているとすれば、その理由は、
(1)優秀じゃないから一面的なものの見方しかできない。
(2)自分の主義・思想を反映させている。
のどちらかではないだろうか。コイツは(1)だ!と言うと怒られそうだから、だいたいは(2)であろうと仮説する。
気になったので、簡易的にではあるが、検証を試みてみた。現在も掲載されている、過去5年間の非典型的な知財トラブルを報じたウェブ上のニュースで、弁護士、弁理士、法学者などの知財有識者が事件に関する法的見解を述べた記事をピックアップしてみたのだ。漏れがあるかもしれないが、80件集まったところでヨシとした。細かい抽出条件などは脚注*2を見ればよろしい。
これらの記事の専門家コメントを「侵害寄り意見」「非侵害寄り意見」「判断留保」に分別して、何らかの傾向や特徴が見られるかどうかを探ってやろうという寸法である。
私は冒頭述べた通り、「侵害寄り意見」が多いのではないかと予想した。なぜならば、少なくとも形式的・表面的に違法となる要件を満たしていれば「違法の可能性がある」とは言えるが、違法性を退けるには「実はこういう事情があって」*3という、表面には出てきにくい背景を知らなければ(調べなければ)ならない場合が多いと思ったからである。パッと見で違法なものを「いや、実は適法」と言うには労力が必要なのである*4。
さて、結果はどうなるだろうか。以下で見ていこう。
2.識者はどっちの味方をしている?—集計結果と分析
以下のグラフを見て頂きたい。
「侵害寄り」が32件・40%。
「非侵害寄り」が34件・42%だったのである。
い、意外と拮抗しているじゃないか!
残りが、どちらでもない「判断留保」 (14件・18%)だ。
中身を分析してみよう。
まず思ったのは、特許権侵害事件は、侵害成否に関するコメント自体がかなり少ないなということだ。特許は、係争対象物を実際に見て触って、あるいは分解などしないと判断できないから、いきなり「どう思いますか?」と言われても何とも言えないんだろうね。また特許権自体の有効/無効性も重要なファクターだが、無効調査は手間がかかるので、やはりこれについても、いきなり聞かれて調べるわけにもいかないのではないだろうか。
調べていてよく分からなかったのが、比較的、侵害・非侵害意見をハッキリと述べる傾向にある栗原潔弁理士の「これは無効だとか侵害してないみたいな話を書いてしまうと後で実業に差し支える可能性もないわけではないので(書かない)」 というコメントである。他の権利はよくて(?)、特許だとなぜ、どう差し支えるのか、ちょっと考えたけどよく分かりませんでした。一般的にそんなものなのでしょうか。
もっとも、単純な内容の特許と、目にしやすい(入手しやすい)対象物に関する事件は比較的コメントしやすいようで、最近だとユニクロが訴えられている、アスタリスク社のセルフレジに関する特許権侵害事件についてはいくつかコメントを拾えた。
3.個々のコメント傾向(齋藤理央弁護士と福井健策弁護士)
何回も登場している有識者のコメントを集めてみると、その人のコメント傾向が浮かび上がってくるのも面白い。10記事を抽出した齋藤理央弁護士は、その内7件が「侵害寄り意見」、2件が「判断留保」、1件が「非侵害寄り意見」である。この偏りから、齋藤弁護士は基本的にプロパテント派というか、権利者の独占排他権の範囲を広く捉える主義・思想をお持ちなのではと推察されるのである。
そういえば齋藤弁護士といえば、今年界隈で物議を醸したが、「画像付きツイートをリツイートして、TL上に表示される画像の上下が切れて、元の画像に書かれていた著作者名が見えない状態になった場合、リツイート者は著作者の氏名表示権を侵害する」という最高裁判決(ただしプラットフォーマーに対する発信者情報開示請求事件)を導いた代理人でもある。なんだかミョーに納得してしまった。
ちなみにそんな齋藤弁護士が「判断留保」した事件のひとつが、画家の勝海麻衣による虎のイラストが、他のイラストレーターの作品のパクリではないかと騒がれた騒動だ。これは客観的には著作権侵害のおそれが濃厚と思われるし、後には勝海氏も依拠と構図の無断使用を認めている事案だが、齋藤弁護士は「(依拠について)外部からは何とも言えない部分です」など述べるに留め、明言を避けている。
思えば勝海氏の騒動は当時炎上状態になっており、やったことの評価はさておき、気の毒な状態ではあった。普段の齋藤弁護士の傾向を踏まえてこのコメントを眺めると、「へー、意外と優しいとこ、あんじゃん」と思った次第である。*5
福井健策弁護士は9記事を抽出したが、6件が「非侵害寄り意見」で3件が「判断留保」。これもまた、同氏の主義・思想が浮かび上がったといえるのではなかろうか。
ちょっと原典にたどり着けずうろ覚えで恐縮ですが、以前福井弁護士が何かの記事で「先生は利用者(侵害疑義者)側の味方をすることが多いですよね」と問われ、「自分は権利者の味方でも利用者の味方でもない。作品の味方である」というようなことを述べていた記憶がある。
私はこれを、「権利保護が弱過ぎれば、作品を創り出すインセンティブが失われるし、権利保護が強過ぎれば、既存の事物を土台にした作品が創り出せなくなる。そのバランスを重視して立場を決めているのだ」という趣旨だろうと解釈したわけですが、そうすると非典型的な(=権利者に典型的な不利益をもたらさない)侵害疑義については、自然と許容寄りの発想になるのではないかなと思うのである。ちなみに、私自身の考え方はこれに近いですね。
福井健策『改訂版 著作権とは何か 文化と創造のゆくえ』(集英社)
各人の「判断留保」意見も興味深い。「判断留保」といっても色々あって、侵害成否の意見に踏み込まずに侵害要件や訴訟戦術の解説をしてお茶を濁す(?)人もいれば、両論併記でバランスを取ろうとする人もいる。堂々と「不明です」などとおっしゃる人さえいる(なんで取材受けたの?)。
共通していえるのは、先入観を与えないように、あるいは客観性を持たせようという努力の跡が見られることだ。ある意味、一番丁寧に読者や当事者に気を遣っているし、ハッキリいって、報道ベースの情報ソースから、外野が正確な法的見解なんて導き出せるわけがないんだから、実のところ「判断留保」が一番正しい答え方なんだと思う。
とはいえ、一般の読者からすると、「結局どうなの?」とモヤモヤさせられることが多く、記事としてはあんまり読み応えがよくないのですよね。「訴訟になってみないと分かりません」などと言われても、そりゃ全部そーなんだけど、せっかく聞いてるのにあまりにも身も蓋もないではないか。
4.まとめ―有識者の「主義・思想」をどう受け止めるか
今回の調査の結果、「知的財産権に詳しい有識者」のコメントは、先入観を与えまいと腐心するものも見受けられたが、やはり「ご自身の主義・思想」に基づくものが多く、そしてその方が記事として強く印象に残る。これが、さまざまなコメントを眺めて思った今日のところの結論である。
私は法律の専門家が「個々の主義・思想」に基づいて発言することはまったく結構なことだと思うし、その方が健全だと思う。
ただ、受け手からは、それが「客観的な真理」であるかのように見えてしまいがちなのは心配だ。実際には、敢えて強調していえば、どちらかを応援したいという「偏った」主義・思想に基づいて発信されていることが多いのである。*6それは決して真理や正解ではないし、もちろん必ずしも各人のコメント通りの判決にもなっているわけではない(発言者によって見解が異なる事も多いしね)。
本当は、メディア側が読者に侵害成否の先入観を植え付け過ぎないように、有識者の見解を取る場合には、それを単に「有識者の見解」として紹介するのではなく、どういう主義・思想の人でどういう立場から発言してもらっているのかを明らかにするような記事構成を心がけた方がいいのではないか思う。
そして読者側も、新聞やネットニュースを読んで「弁護士がそう言っているのだからアウト(セーフ)なんだろう」と鵜呑みにしないようにすることが大事ではないでしょうか。もちろん、専門家が個人で発信しているブログやツイートなども同じだが、参考にはしつつ、常に疑いのまなざしも持っておいていたほうがよいと思う。
といったわけで、「メディアリテラシーは大事である」というなんともフツーのオチになってしまいました。ありがとうございました。
城所岩生『フェアユースは経済を救う デジタル派遣戦争に負けない著作権法』(インプレスR&D)
友利昴『オリンピックVS便乗商法 まやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘』(作品社)
5.分析生データ
なお80件の分析データをまとめた表は以下の通りである(PCじゃないと見づらいかもしれません…)。なお、「侵害寄り意見」「非侵害寄り意見」の分類については、慎重に言葉を選んでいる専門家も少なくなく、分類しにくいものもあったが、判断に迷ったものは、平均的な一般読者の感性に照らして「読んでどちらの印象を持ちそうか」という手法で分類した。もし「いや、そうだとしても読解の仕方が間違ってるよ!俺はそんなつもりで言ってないよ!」というご意見がありましたら、ご指摘ください。
Hanada表紙事件 | 齋藤理央 | 非侵害寄り意見 | 『商品形態模倣行為』を問題としているようです〔…〕特別の事情がない限り違法とはなりません。 | 弁護士ドットコムニュースー「WiLL」元編集長の新雑誌「Hanada」の表紙が似ていると話題に…法的論点は? |
ONO消しゴム事件 | 大塚理彦 | 侵害寄り意見 | 「〔…〕協会がONOの3文字に固執すれば、トンボ側は拒否する」とみる。〔…〕「裁判所は模倣品を作った意図は考慮しない」と大塚教授。 | 神戸新聞―小野のパロディー消しゴム “MONOまね”難航 |
ONO消しゴム事件 | 島並良 | 侵害寄り意見 | そもそもこのデザインが商標法に触れる可能性を指摘〔…〕「消費者の誤認や混同の可能性がある」とみる。 | 神戸新聞―小野のパロディー消しゴム “MONOまね”難航 |
ONO消しゴム事件 | 冨宅恵 | 侵害寄り意見 | 商標権を侵害していると判断される可能性は高いのではないかと考えています | 弁護士ドットコムニュース―「MONO消しゴム」にそっくり、小野市「ONO消しゴム」は本当にアウト? |
アース・ウインド&ファイアーパロディ問題 | 桑野雄一郎 |
非侵害寄り意見 |
類似性はないといえるでしょう。〔…〕似た印象を与えても編曲権侵害にならない程度に違う楽曲に仕上げている例が多いと思います。 | 弁護士ドットコムニュース―「ポプテピピック」でアース・ウインド&ファイアー、曲のパロディどこまで許される? |
アビス・ホライズン事件 | 中島博之 | 非侵害寄り意見 | ゲームの画面や影像が似ているというだけで著作権侵害を認めさせるにはかなりのハードルがあると考えられます。〔…〕同じ理屈で不正競争防止法違反が認められる可能性は低いと考えます。 | ねとらぼ―注目集まる「アビス・ホライズン」訴訟問題 「艦これAC」は“パクリゲーム訴訟”暗黒の歴史を塗り替えられるか |
編み物動画事件 | 福井健策 | 判断留保 | 著作物と認められるために重要なのは、作品に十分な独創性があるのかということ。どういう造形なのかが決め手になると思われる | ITMedia—編み物動画著作権めぐり、YouTuber法廷闘争 |
アンパンマン人形焼事件 | 桑野雄一郎 |
侵害寄り意見 |
複製物に当たる可能性は高いでしょう。 | 弁護士ドットコムニュース―アンパンマンの「人形焼」を無許可で販売、形が崩れても「著作権侵害」になるの? |
磯丸すし外観事件 | 井奈波朋子 | 非侵害寄り意見 | 類似の外観を用いることを不正競争防止法違反によって禁止することは、実際にはハードルが高いといえます | 弁護士ドットコムニュース―や台ずし「店の外観を模倣された!」磯丸すしを提訴、何がポイントになる? |
うちで踊ろう(安倍晋三)問題 | 高木啓成 | 非侵害寄り意見 | ツイッターでユーザーが『うちで踊ろう』を利用しても、JASRACに申請する必要はありません(正確に言うと『ビデオグラム録音』という区分も除外している必要があると思います) | 弁護士ドットコムニュース―安倍首相は「JASRAC」に許諾をもらう必要があった? 星野源さん「うちで踊ろう」コラボ動画 |
ウルトラマン事件 | 西澤滋史 | 判断留保 | 「実は、海外におけるウルトラマンの著作権問題はかなり複雑で、国によって見解が割れているのです」「中国側に新シリーズの制作権があるかどうかがポイントになるでしょう」 | NEWSポストセブンー円谷プロが中華ウルトラマン退治へ 「勝利願う」と中国ファン |
エコリカ事件 | 大東泰雄 | 判断留保 | 現実の訴訟の行方は技術上の変更理由が本当にあったのかどうかになると思う | Business Journal—キヤノン、安価で人気の再生インクカートリッジ使用不可を細工か…エコリカ、独禁法違反で提訴 |
おそ松さんパロディ事件 | 唐津真美 | 非侵害寄り意見 | 著作権侵害の成立は難しいと思われます。 | 弁護士ドットコムニュース―過激パロディで注目されたアニメ「おそ松さん」 巨人化した「チビ太」は著作権侵害? |
音楽教室事件 | (記名なし弁護士) | 侵害寄り意見 | 今回の判決は「予想された結果」だという。 | ITMedia—JASRAC対音楽教室、地裁判決は順当かナンセンスか 「一般人の常識に即した裁判」の論点を整理する |
音楽教室事件 | 砂川浩慶 | 非侵害寄り意見 | 公衆に聞かせることが目的とは言い切れない。 | 産経新聞―「演奏権」解釈めぐり対立 JASRAC問題 音楽教室が提訴検討 |
音楽教室事件 | 城所岩生 | 非侵害寄り意見 | 専らスキル習得を目的とした音楽教室での演奏も享受を目的とした演奏にあたらない可能性がある | プレジデントオンライン―JASRACと係争中"音楽教室"が旗色悪いワケ |
音楽教室事件 | 福井健策 | 判断留保 | 法廷闘争になったら勝敗は極めて微妙だと思う。 | 産経新聞―音楽教室での演奏から著作権料を徴収へ 著作権法どう解釈 「なぜ問題になるのか理解に苦しむ」「著作権の公益性が問われている」 |
かに道楽事件 | 大塚理彦 | 侵害寄り意見 | 「先使用権をめぐる争いは少なくないが、単に先に使っていたというだけで認められるものではない」 | 産経新聞―【衝撃事件の核心】おなじみ「かに道楽」商標権バトル勃発 「道頓堀のシンボル」の〝敵〟は愛知のかまぼこ…どっちに軍配? |
かに道楽事件 | 齋藤理央 | 判断留保 | 和解の可能性もあると思います。それが難しくなれば〔…〕“指定商品との類似性”を立証する必要が出てくる。先使用権も争点になるでしょう | NEWSポストセブン―大阪と愛知で前代未聞の激しい「かに・かに合戦」が勃発 |
歌舞伎事件 | 栗原潔 | 非侵害寄り意見 | 商標権の効力は及びませんのでやはり問題ないと思われます。 | Yahoo!ニュース個人―松竹の「歌舞伎」商標登録出願問題について(歌舞伎揚とグレート・カブキは大丈夫か) |
歌舞伎事件 | 平野泰弘 | 侵害寄り意見 | すでに商標登録済みのジャンルについては、手続き上、松竹がその許諾権を有すると考えられます。〔…〕「興行における『歌舞伎』の商標登録はなかなか難しいと思います。」 | NEWSポストセブン―松竹「歌舞伎使用禁止令」でG・カブキや歌舞伎揚どうなる? |
カメラを止めるな!事件 | 栗原潔 | 非侵害寄り意見 | 著作権侵害を主張できそうな根拠は出てきていないように思えます | Yahoo!ニュース個人―「カメラを止めるな!」は著作権侵害か?(ネタバレなし) |
カメラを止めるな!事件 | 河西邦剛 | 侵害寄り意見 | 翻案となり裁判において著作権侵害と認定される可能性はあり得ます。 | オリコンニュース―騒動の『カメラを止めるな!』“原作”・“原案”どう違う? 専門家に聞く |
カメラを止めるな!事件 | 桑野雄一郎 | 侵害寄り意見 | 原作者の著作者人格権(同一性保持権)を侵害したとして、慰謝料の支払いも問題になるかもしれません。 | ハフィントンポスト―映画「カメラを止めるな!」は「パクリだ」と週刊誌報道、弁護士の見解は? |
カメラを止めるな!事件 | 高橋裕樹 | 判断留保 | 本質的な特徴が『そっくり』か独自性があるかどうかが問題で、裁判官もそこに注目することになるだろう | ZAKZAK by 夕刊フジ―大ヒット映画「カメラを止めるな!」に盗作騒動 裁判になる可能性も… |
カメラを止めるな!事件 | 田上嘉一 | 非侵害寄り意見 | 侵害が成立する可能性は低いと言えるでしょう。 | 東洋経済オンライン―「カメラを止めるな!」盗作騒動の法的な論点 |
カメラを止めるな!事件 | 福井健策 | 非侵害寄り意見 | 『断言はできないが、侵害と判断されるハードルは高い』という解説は穏当だろう。 | 弁護士ドットコムニュース―「カメ止め」パクリ騒動で相次いだ「検証記事」…福井弁護士が振り返る |
喫茶ステラと死神の蝶事件 | 井奈波朋子 | 非侵害寄り意見 | 知的財産権を理由とするコンテンツからの削除の主張は困難と思われます | 弁護士ドットコムニュース―アダルトゲームで「有名洋菓子店の外観」を無断使用、聖地巡礼も…法的問題は? |
喫茶ステラと死神の蝶事件 | 丸山敦裕 | 非侵害寄り意見 | 「性的な場面で使えば営業妨害になる可能性もあるが、背景に使うだけなら削除などを求めるのは難しい」 | 神戸新聞―アダルトゲームが人気洋菓子店「エス・コヤマ」外観を無断使用 |
喫茶ステラと死神の蝶事件 | 徐東輝 | 非侵害寄り意見 | 法的にはこれまで述べてきたとおり、違法性を問うことは難しい | WEZZY—アダルトゲームが実在する建物の外観を「無断使用」、建物に知的財産権はあるか? |
棋譜無断中継事件 | 伊藤雅浩 | 侵害寄り意見 | 「棋譜自体にはおそらく著作権はない」が、無断で配信する行為が「民法上の不法行為に当たる可能性はある」と話す。 | ITMedia—「棋譜」に著作権はある? 「無断中継」なぜNG? 朝日新聞に聞いた |
棋譜無断中継事件 | 吉岡達弥 | 侵害寄り意見 | パブリシティ権の侵害として不法行為責任を負い、損害賠償の対象となります」という。 | J-CASTニュース—将棋「YouTube実況」めぐり議論 個人の「棋譜中継」は権利侵害になる? |
棋譜無断中継事件 | 齋藤理央 | 侵害寄り意見 | 「この権利が、法的保護に値すると判断される可能性は否定できないでしょう」 | 弁護士ドットコムニュース―将棋実況YouTuberに朝日新聞「権利侵害なので中止を」、何の権利侵害なのか? |
京都大学式辞事件 | 栗原潔 | 非侵害寄り意見 | 今回のケースは歌詞の使用部分がやや多いような印象はありますが、概ね上記の要件に合致していると思えます。 | Yahoo!ニュース個人―京都大学式辞でのボブディランの歌詞使用にJASRACが物言い |
京都大学式辞事件 | 福井健策 | 非侵害寄り意見 | 法的に見て適法引用が成立する可能性がかなり高い見通しだったと言える。 | プレジデントオンライン―JASRAC"式辞の歌詞引用"で請求は正当か |
京都芸術大学事件 | 横山久芳 | 判断留保 | 微妙なケースのため、大阪地裁がどう判断するか分かりません。 | 日刊スポーツ―「京都芸術大学」がどこを連想するかが鍵/識者見解 |
京都芸術大学事件 | 福井健策 | 判断留保 | 「市立芸大が十分に知名度がある名称で、名称変更によって混同される恐れがあると判断されれば、名称変更は違法となる」と指摘。一方で、「『京都』という地名や『芸術』という名詞は容易に独占できるものではないと判断されることも考えられる」とした。 / 市立芸大を目指す受験生が旧造形芸術大に間違って出願したり、オープンキャンパスに行ったり、混同が起きるので、変更は違法となりやすいでしょう。両方とも指す状況ならば、不正競争は成り立ちません。 |
産経新聞―法廷バトルに突入した「京都芸大」名称騒動 見えぬ着地点
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京都芸術大学事件 | 齋藤理央 | 侵害寄り意見 | 1審の判断にも疑問もあるところです。〔…〕類似性を肯定する事情と評価できる可能性もあります。 | 弁護士ドットコムニュース―京都市立芸術大は逆転できる?大学名めぐる訴訟のポイントはズバリ「似てるかどうか」 |
クソコラ問題 | 清水陽平 | 侵害寄り意見 | 法的に見れば著作権侵害である可能性が高いといえます。 | 弁護士ドットコムニュース―「私たちは怒っています!」が「我々が新たなSMAPです」に――クソコラの法的問題 |
クッパ姫問題 | 齋藤理央 | 侵害寄り意見 | そうすると、著作権(翻案権)侵害と評価し得ることになります。 | 弁護士ドットコムニュース―二次創作の女体化キャラ「クッパ姫」が人気爆発、著作権問題を考察 |
ゲンコラ事件 | 杉浦健二 | 侵害寄り意見 | 著作権者の翻案権(同27条)や、漫画家が有する同一性保持権(同20条)を侵害する可能性が高くなります | 弁護士ドットコムニュース―「はだしのゲン」使った「ゲンコラ」流行、出版社「転載お断り」と警告…法的問題は? |
高知事件 | 冨宅恵 | 非侵害寄り意見 | 『高知』は『COACH』の商標権を侵害しないと判断されることになるでしょう。 | 弁護士ドットコムニュース―「COACH」じゃなくて「高知」ブランドに注目あつまる…商標登録は認められる? |
五輪エンブレム風刺事件 | 齋藤理央 | 侵害寄り意見 | 日本の著作権法では、今回の利用について適法化するのは困難ではないかと思います。 | 弁護士ドットコムニュース―「東京五輪エンブレム」風刺したデザイン、ほんとに「著作権侵害」にあたるの? |
ジャニーズ通信事件 | 栗原潔 | 侵害寄り意見 | 商標権侵害となる可能性はあります(商標的使用ではないという抗弁も可能に思えるので起訴されるかどうかはわかりませんが) | Yahoo!ニュース個人―「チケットキャンプ」が警察の捜査を受けたのはなぜなのか? |
ジャニーズ通信事件 | 齋藤理央 | 侵害寄り意見 |
商標権侵害と判断される可能性があります。ただし、〔…〕慎重に判断されることになります。〔…〕著名な商品等表示を『自己の商品等表示』として使用していたといえる場合、不正競争防止法違反が成立しえます。 |
弁護士ドットコムニュース―「ジャニーズ通信」休止、チケキャン運営会社に家宅捜索…商標法違反のポイントは? |
授業で違法アップ動画問題 | 磯田直也 | 侵害寄り意見 | (2)授業内容に関係したインターネット上の動画を授業中に受信し、教室のディスプレイ等で視聴させることは、〔…〕違法に動画をアップロードされた著作権者の受ける不利益が大きく、利用は認められないということになりそうです。 | ねとらぼ―「授業で違法アップロード動画を見せられた」学生がSNSで指摘 法的な問題は? 弁護士に聞いた |
聖火リレー動画事件 | 福井健策 | 非侵害寄り意見 | ランナーの姿の撮影公表が肖像権侵害になる可能性はやや低いように思います。 | 弁護士ドットコムニュース―聖火リレー動画「SNSに投稿禁止」からOKに 公道の撮影ルール、福井健策弁護士に聞いた |
セルフレジ事件 | (記名なし弁理士) | 侵害寄り意見 | 「権利化された以上、少なくとも過去の出願の中に、同特許の新規性や進歩性を否定するものは無かった可能性が高い」 | 日本経済新聞―ユニクロが訴えられたセルフレジ特許 単純だから強力 |
セルフレジ事件 | 栗原潔 | 侵害寄り意見 | 「もともとアスタリスクは特許権ライセンスを要求していたので、それに応じることになると思います」と話すと同時に、「条件面で折り合わなければ侵害しないタイプのレジ(従来の平置き型)に切り替えることも考えられます」 | ダイヤモンドオンライン―ユニクロを特許侵害で訴えた下請け社長語る「ゼロ円でライセンスを要求された」 |
セルフレジ事件 | 栗原潔 | 判断留保 | 「この点は実際に機器を開発している企業でないとわからない」と解説する。 | ダイヤモンドオンライン―ユニクロ・セルフレジ特許訴訟「泥沼化」の内情、今度はGUも提訴へ |
セルフレジ事件 | 藤野仁三 | 侵害寄り意見 | 「こうした単純な特許ほど、特許登録されている場合は非常に強い特許になり、簡単に潰せなくなるのが業界の通説だ」〔…〕 「どこかの段階で、和解金で決着するだろう」と、藤野氏は予想する。 |
ダイヤモンドオンライン―ユニクロを特許侵害で訴えた下請け社長語る「ゼロ円でライセンスを要求された」 |
断捨離事件 | 栗原潔 | 非侵害寄り意見 | 普通名称としての使用と言えなくもない(つまり、商標権の行使は認められない)ような気がします。 | Yahoo!ニュース個人―「断捨離」登録商標と「ナカイの窓」問題の論点 |
断捨離事件 | 古岩信嗣 | 侵害寄り意見 | 商標権の侵害にあたる可能性があるという。 | NEWSポストセブン―『ナカイの窓』が「断捨離」使用でトラブル、終了にも影響か |
強い女メーカー事件 | 平野敬 | 非侵害寄り意見 | もし問題の画像掲載が適正な引用として認められるものであるならば、著作者はそれを禁止することはできず、損害賠償を求めることもできません。 | ねとらぼ―「Webサービスをスクショで紹介したら50万円請求された」―― 物議を醸した「強い女メーカー」問題の争点は |
東京2021ドメイン事件 | (記名なし識者) | 侵害寄り意見 | 「営利目的で関連付けて使えば違法の可能性が高い」 | 時事通信―「東京2021」使える? |
東京2021ドメイン事件 | 栗原潔 | 侵害寄り意見 | 不正競争防止法違反とされる可能性が高い。 | 日本経済新聞―出回る「東京2021」ドメイン使える? 五輪延期に便乗オークション出品 「違法」指摘も |
虎のイラスト事件 | 齋藤理央 | 判断留保 | 1つ目の『似ているか』という点でいうと、『似ている』ということになるかと思います。〔…〕この一致が偶然というのであれば、〔…〕絵のオリジナリティを勝海さんのほうで主張していくことも必要になる | 弁護士ドットコムニュース―「美人銭湯絵師」勝海麻衣さんにパクリ疑惑、著作権侵害にあたるか? |
ドラクエ・リュカ搾取事件 | 川野智弘 | 非侵害寄り意見 | 著作権法の保護が及ばない情報の利用については、特段の事情がない限り一般不法行為による保護は及ばない、と判断される傾向にありますので、容易には認められません | デイリー新潮―「小説ドラクエV」の著者が、主人公の名前をパクられたと「映画ドラクエ製作委員会」を提訴、専門家の見解は? |
信長の野望事件 | 安藤和宏 | 侵害寄り意見 | 著作権を侵害する疑いがあり、訴訟をしたらアウトになる可能性が⾼い。 | 毎日新聞(西部朝刊)2020.5.10—著作権:⼤分市模倣 「信⻑の野望」豊後の変!? 広報誌、ゲームそっくりキャラ 著作権侵害疑い |
パーマ大佐森のくまさん事件 | 河西邦剛 | 判断留保 | 「同一性保持権の侵害」と認定するかは、実際の訴訟進行との関係でどちらとも考えられるところでしょう。 | 弁護士ドットコムニュース―童謡「森のくまさん」替え歌CD、訳詞者が販売中止要請…法的にどう考えればいい? |
パーマ大佐森のくまさん事件 | (記名なし弁護士) | 非侵害寄り意見 | 弁護士の見解は、改変には当たらないのではという。 | J-CASTニュース―「森のくまさん」替え歌がNG? 歌詞につけ加えた長セリフが問題に |
パーマ大佐森のくまさん事件 | 尾崎博彦 | 侵害寄り意見 | 作詞全体に改変はなくても付け加えたり省略すれば著作者人格権侵害の可能性もある | J-CASTニュース―発売ストップかかった「森のくまさん」 怒った訳詩者が抗議 |
パロディアパレル摘発事件 | 冨宅恵 | 非侵害寄り意見 | オリジナル商品と認定できるケースは少なくない。〔…〕いきなり刑事事件になるのは違和感がある | 産経デジタルIZA—悪質なパクリ?壮大なシャレ? 商標権侵害、パロディーのあいまいな線引き |
バンクシー非公認展覧会事件 | 栗原潔 | 非侵害寄り意見 | 所有者さえOKすれば、著作権者であるバンクシーが何と言おうと著作権侵害にはなりません(道義的な話はまた別です)。 | Yahoo!ニュース個人―バンクシーの「非公認」展覧会は著作権侵害にならないのか? |
バンクシー非公認展覧会事件 | 水野祐 | 判断留保 | バンクシーが“フェイク”と表示することがフェアかどうか、という問いについては、〔…〕フェアと言えるのだと、一般的には回答できます。ただ、一方で、〔…〕所有者が単に作品を紹介・解説する目的で展示するようなケースまで“フェイク”認定する、というのは私はフェアとは思いません | 弁護士ドットコムニュース―バンクシー展、本人は「フェイク」扱いするけど問題あるの? 法的問題を徹底解説 |
ヒカシュー事件(水曜日のカンパネラ) | 桑野雄一郎 | 非侵害寄り意見 | 法的には基本的に問題はありません。 | 弁護士ドットコムニュース―「水曜日のカンパネラ」騒動、実在バンド名を「曲名」に使うことの法的問題は? |
平等院鳳凰堂パズル事件 | 拾井央雄 | 非侵害寄り意見 | 「書面を作って押印したのではなくパンフレットに書かれただけなら、単なる案内だと思って写真の営利使用禁止を認識できなかったと言われるかもしれない」と話している。 | 毎日新聞(京都版)2019.5.15—平等院パズル訴訟:写真の商業利用を問う 寺の価値下落? |
平等院鳳凰堂パズル事件 | 福井健策 | 非侵害寄り意見 | 公道などから有名建築の外観を撮影してTV放送やカレンダーなどに使う行為は、現に広くおこなわれていますし、基本的に自由です。〔…〕宗教上の人格権の問題とするのは、恐らく困難でしょう | 弁護士ドットコムニュース―平等院、「無断撮影」のパズル販売停止求め提訴、寺院の権利はどこまで? |
星の王子さま事件 | 栗原潔 | 非侵害寄り意見 | 法律的には(おそらく)問題なかった | Yahoo!ニュース個人―パブリックドメインなら何をしても許されるのか?:「星の王子さま」のケースを検討(追記あり) |
星の王子さま事件 | 福井健策 | 非侵害寄り意見 | 商標権の侵害もやや考えにくいところです。〔…〕著作権の切れた後の利用について人格権の侵害が認められた判決例は、ほとんど報告されていないようです | 弁護士ドットコムニュース―「星の王子さま」コラボ商品、権利侵害の批判受け2日で販売終了…本当に法的問題はあった? |
香港警察鬼滅の刃事件 | 浜崎晃 | 判断留保 | 海外においては当該国の法律が適用されることから、上記のような判断がなされるかは不明です | まいどなニュース―香港警察による「鬼滅の刃」酷似のキャラ…「コスプレ」との主張に問題はないの? 専門家に聞いてみた |
マリカー事件 | 栗原潔 | 非侵害寄り意見 |
法的措置に訴えるのはわかるのですが、大目に見てあげても良いレベルなのではないかなと個人的には思います。 / 任天堂にとっては決して楽勝というわけにはいかないのではないかと思います。 |
Yahoo!ニュース個人―任天堂がマリオカートのコスプレ付カートレンタル業者を提訴
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マリカー事件 | 三谷淳 | 侵害寄り意見 | 差し止め請求は認められる可能性が高いことが予想されます。 | 東洋経済オンライン―任天堂が「マリカー」を訴えざるを得ない事情 |
マリカー事件 | 山岸純 | 侵害寄り意見 | (1)の著作権侵害が認められるのは難しいでしょうが、(2)の不正競争防止法違反は“固い”(=認められる)と思われます。 | BUSINESS JOURNAL—任天堂が提訴のマリカー、著作権侵害は成立せず?発想は素敵だが「絶対許されない」理由 |
マリカー事件 |
福井健策 | 非侵害寄り意見 | 当初、マリカー社が任天堂と関係があったり、許諾を得ていたりしていると勘違いされないだろうと私は考えていた。ただ、〔…〕コスチュームも併せて見れば、裁判所の判断も変わるかもしれない。〔…〕裁判で白黒はっきりさせてしまうのが良策なのだろうか。別の解決策を考えてほしい | 日本経済新聞―マリカー訴訟、焦点は「コスチューム」 |
マリカー事件 | 齋藤理央 | 侵害寄り意見 | 本件は、裁判所が不正競争防止法違反、著作権侵害と判断する可能性があると考えられます | 弁護士ドットコムニュース―任天堂が「マリカー」提訴、本当に「著作権侵害」「不正競争防止法違反」なのか分析 |
マリカー事件(を受けたコスプレ問題) | 齋藤理央 | 侵害寄り意見 | 不正競争防止法2条1項1号、2号は、営利性を必ずしも要件としていないことから、同人イベントでも慎重な検討が必要です。 | 弁護士ドットコムニュース―マリカー裁判、「コスプレ」同人イベントにも影響ある? 判決文を読み解く |
リーチサイト問題 | 井奈波朋子 | 非侵害寄り意見 | リーチサイトを取り締まることに対して困難が生じているのです ※引用者注:現行著作権法施行前の記事 |
弁護士ドットコムニュース―違法動画を紹介する「リーチサイト」著作権法違反に問える?規制の行方は? |
リシュ活事件 | 金子直也 | 非侵害寄り意見 | 「著名な商標へのフリーライド(ただ乗り)が問題となるが、サービスを必要とする人が重複していないと判断されれば、実害は生じないことになる」 | 日本経済新聞―「Re就活」と「リシュ活」 商標権侵害で訴訟 |
リシュ活事件 | 牧野和夫 | 判断留保 | 「リシュ活が商標登録されているのは有利な要素だが、文字の商標の場合、称呼が重要な役割を果たすことも多く、微妙な判断になる」と解説。 | 日本経済新聞―「Re就活」と「リシュ活」 商標権侵害で訴訟 |
*1:ハイスコアガール著作権事件、チケットキャンプ(ジャニーズ通信)商標権事件など、たまにかなり微妙な事案もあるのだが。いずれも不起訴処分で終わっている。興味ある人は各自検索だ。
*2:本記事企画「知財系Advent Calendar」を主催している知財ニュースのキュレーションサイト「パテントサロン」のバックナンバーを参考に事件を抽出し、主にパテントサロン上のリンクを手掛かりに探した。加えてgoogle検索や手元の報道資料なども補強的に用いた。個人ブログや事務所のコラムなどは対象外とし、マスメディアとして機能している媒体におけるコメントを選んだ。メディア記事ではあるものの中には事実上のコラム状態になっているものもあり、特に「Yahoo!ニュース個人」の栗原潔弁理士の記事は悩んだが、今回は対象に入れた。ただし典型的なマスメディアであるテレビ局や新聞社のネット記事はリンク切れや有料記事が多くてほとんど参照できず、ネットメディアが中心になっている点にご留意頂きたい。平野泰弘弁理士、安藤和宏教授など、テレビ、新聞の取材対応が多い専門家もいるが、ほとんどフォローできなかった。なお、事件当事者の代理人など、当事者・関係者としてのコメントは対象外とした。
*3:実は権利に瑕疵や無効事由があって、とか、周辺技術や需要者の認識、既知の事例、過去の裁判例を踏まえると権利の射程が狭くて、とか。妥当な経緯などの個別事情とか。
*4:私も多少の経験があるが、メディアの取材はとにかく突然電話がかかってきて(出版社経由とかで)、いきなり質問されるのである。答えられそうな質問だったとしても、「ちょ、ちょっと待って。1時間後にもう一回かけてください」などと言って、急いで情報を整理して見解をまとめて答えているのである。情報ソースは既存の報道や公知情報(公開特許情報など)で、それ以外の特別な情報を記者が教えてくれることもあまりないと思う。したがって、労力をかけて慎重に検討して回答するというプロセスは取りにくい。
*5:なお齋藤弁護士が「非侵害寄り意見」を表明したのは、オピニオン誌「WILL」が、競合する雑誌「Hanada」の表紙は不競法2条1項3号違反であるとツイッターで主張した件についてである。ただし主題が「不競法2条1項3号(形態模倣行為)に該当するか否か」という、かなりピンポイントな論点の記事ではある。
*6:例えば、著書などで度々日本版フェアユースの導入を訴えたり、JASRACに批判的な意見を表明している城所岩生教授のように、その主義・思想が明確になっている識者の意見は、予断を持って受け止められるが、それでも、記事を読んだみんなが城所教授の見解のバックグラウンドを知っているわけでもないからなぁ。かくいう私も、過剰なアンブッシュマーケティング規制に批判的な立場を採っており、取材でもそれを隠していないのであります(自分なので今回の集計には入れていません)。