ブログブログ by 友利昴

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重版御礼『エセ著作権事件簿』の試し読み特集!

『エセ著作権事件簿—著作権ヤクザ・パクられ妄想・著作権厨・トレパク冤罪』ですが、想定以上にご好評頂き、在庫がない、届くのに時間がかかるなど、入手しにくい状況が続きました。置いてあるところにはあるので、ご興味のむきは探してみてください。ということで、おかげさまで大反響重版をすることになりました。ご指導くださった編集者の濱崎さんや、読んで下さった皆さんのおかげです。

エセ著作権事件簿

本の概要や目次は前回の記事を読んでいただくとして、今回は、『エセ著作権事件簿』の中から一部を試し読みとして、著者自ら、一言コメントを添えて本文冒頭部を掲載したいと思います。それでは、行ってみましょう。

56頁「プールの底のミッキーマウス事件」
私自身、これは都市伝説の類で「いくらなんでもディズニーがそこまでしないだろう」とずっと思っていたのですが、本稿のために調べたら本当にやっていた(笑)。しかも同時期、米国でもディズニー本社が託児所のミッキーマウスに抗議していたというのだから、これはもう、当時「ジャリどもに著作権の恐怖を植え付けよう!」という経営方針でもあったのではなかろうかと疑ってしまう。しかも、さまざまな事実関係を総合すると、これはエセ著作権の行使だったと結論づけることができるのである。

エセ著作権事件簿試し読み ミッキーマウス プール

63頁「寝床で読む『論語』事件」

論語を研究してる儒教学者にして、自分の訳語をパクられたと大騒ぎしてブチ切れた器の小さすぎる男の話。著作権法の法理に照らしてメチャクチャなのはもちろん、この人は、論語からいったい何を学んだんでしょうねぇ。小人過ぎるだろ!孔子が聞いたら泣くわ!ツッコミが止まらない最高の素材。

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180頁「4分33秒事件」
ジョン・ケージ作曲による、4分33秒間音を出さないという「音楽作品」。そのジョン・ケージ著作権管理団体が、「1分間の無音トラック」を著作権侵害で訴えるという珍事件が発生した。登場人物全員がうさんくさいです。さらに、この「4分33秒」が著作権法で保護され得るのかという著作権法学上の難問にも切り込んでいます。

エセ著作権事件簿試し読み

193頁「神獄のヴァルハラゲート事件」
頭文字が全部「グ」で始まるスマホゲーム企業が、エセ著作権侵害を振りかざして不毛な殴り合いを繰り返した話。実際に、ビジネスの現場においては、「競合にパクられた許せん!」と現場や経営者が騒いで、法務部門が困惑することが実に多いんです。この本から学んでほしいですね。

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238頁「編み物ユーチューバー事件」
YouTubeでは、著作権侵害動画も確かに多いが、その一方で、エセ著作権クレームが横行しているむきもある。そして、知識や度胸の無さから、言われるがままに動画を削除するなど、それに屈してしまうユーチューバーの方が、有名ユーチューバー含めて本当に多いんです。断捨離騒動しかり、東海オンエアの「ぐりとぐら」騒動もそうですね。しかし、もしYouTube上でエセ著作権を振りかざし、それが法廷に持ち込まれると、いったいどんなしっぺ返しを喰らうか、とくとご覧いただきたい。

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245頁 コラム「エセ著作権者を逆に名誉毀損で訴えたらどうなる?」

エセ著作権者は、バカだから自分こそが法的保護を約束された被害者だと信じ込んでおり、平気で公に他人を盗作者呼ばわりすることがありますね。そんな輩を逆に名誉毀損で訴えたらどうなるか?当然エセ著作権者の方が泡食った挙げ句に負けるんです。クリエイターに対する盗作呼ばわりは、クリエイターにとっては業務上の信用毀損に直結するので、侮辱表現や差別表現よりもよっぽど損害が認められやすいし、賠償金も高額になるということは、覚えておいた方がいいでしょうね。本書では、他にも「無断引用禁止というバカワード」「エセ著作権の警告書が届いたらどう対応すべきか」「ネット上でパクリ疑惑が寄せられたらどう対応すべきか」「エセ著作権者からの警告書を暴露したらどうなる?」などの実用的なコラムを掲載しています。

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264頁「どえらいモン大図鑑事件」
これはもう珍事ですよね。この本を書いているときに、版元のパブリブに不正競争防止法違反と著作権侵害の疑いをかける警告書が届いてしまったという(笑)。結果的にはエセ著作権なんですが、そんな警告書に対し、どういう風に対処したか?ある意味で、一番実務的な章だと思います。なんせ実務そのものなので。

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319頁「eco検定最短合格講座事件」
ウィキペディアからのコピペはNGという「常識」があります。しかし、なぜダメなのかを突き詰めて考えたことはありますか?自分の頭で考えて、「常識」を疑うクセをつけないと、この人たちみたいに「コピペだけしからん!」と他人を不当に責め立てて、その結果最高裁まで突っ走って敗訴することになるんですよ。

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341頁「脱ゴーマニズム宣言事件」
日本の著作権法は、フェアユース規定のある米国や、パロディを明文的に合法とするフランスと比べると厳しくて融通が利きにくいと言われます。しかし「引用」の理論を上手に活用すれば、本当は割と自由度高く、他人の著作物を合法に利用することは可能です。ところが、狭量なエセ著作権者たちが過度に引用のハードルを上げようと躍起になっているから、みんな臆してしまう。これはもったいない。「引用」の懐の広さを示した裁判例を、本書では4件紹介しています。その中でも「脱ゴーマニズム宣言事件」は、有名事件。本件で原告だった小林よしのりのゴーマン発言を、冷静な視点で分析すると、実に笑えます。

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372頁「七人の侍事件」
『エセ著作権事件簿』では、著作権を勉強する人なら一度は触れるような有名な裁判例も多数扱っていますが、取り上げ方が一味違う。専門書の判例評釈では決して触れられることのない、事件当時者の裁判外での主張や、周囲の受け止め方の変遷もしっかりとフォローしています。これによって、事件の全体像を評論することに成功していると思う。自分で成功って言うな。これなんか、大衆にのせられた黒澤明の息子が、野武士のように切り捨てられていて最高。

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415頁「コーヒーを飲む男性事件」
近時「トレパク冤罪」の問題が顕在化しているが、線が重なったくらいで不正行為であるかのように喧伝するのは、ハッキリ言って幼稚もいいところである。表に出たら通用しないんですよ。本書では、トレースを裁判沙汰にして見事敗訴した事例や、トレースの指摘に臆す出版社のヘタレぶりが偲ばれる事件を4件取り上げています。

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442頁「棋譜配信事件」
こすっからいエセ著作権の中には、まったく道理になってない理屈を振りかざして、それがあたかも「守るべき当然のルール」であるかのように市民に押し付けてくる輩もいる。当然のような顔すんなバカ!と誰かが言ってやらねばならない。その最右翼が日本将棋連盟IOCである。あと平等院鳳凰堂とかもそうか。全員ぶった斬ってます。

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476頁「『大東亜共栄圏』の形成と崩壊事件」
これ、地味めかもしれないけど、個人的にかなり好きな事件なんですよね。45年間、人生の半分以上の期間、盗作の恨みを抱き続けて敗訴した大学教授の話。この学者は、エセ著作権者なんだが、まぁ実に気の毒、哀れ、かわいそう。この人にもっと著作権の知識と、折れない心があったらなぁ。本当に不幸な人生。45年前にこの本があったら、この人に真っ先に献本してるよ。ぜひ読んでほしい。今さら、遅いかもしんないけど。

エセ著作権事件簿試し読み 創作か盗作か

484頁「東京五輪エンブレム事件」
そして日本史上最大のエセ著作権事件こと「東京五輪エンブレム」事件である。当時佐野研二郎を悪しざまに言う声が圧倒的で、知財やデザイン業界の良識的な声は届かなかった。私は歯がゆい思いをしたものです。今になって、皆さんも冷静に言えるでしょう。オリビエ・ドビって誰やねんお前?と。ちなみにこの本を佐野研二郎さんに献本したのですが、特に反応がありません。

エセ著作権事件簿試し読み 佐野研二郎 五輪エンブレム

といった感じで、大盤振る舞いの試し読みを開陳いたしましたが、他にも全71件のエセ著作権事件を舌鋒鋭く論じ切ったつもりです。ここまで読んだからにはもう買った方がいい!よろしければお手に取ってみてください。よろしくお願いいたします。

友利昴『エセ著作権事件簿―著作権ヤクザ・パクられ妄想・著作権厨・トレパク冤罪』(パブリブ)

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