昨年刊行した『職場の著作権対応100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)が重版となりました!ありがたいことです。
この本には、既存の著作権本には意外となかったポイントがいくつかあり、そこが好評を得ているようです。
全体的な内容としては、仕事をするうえで遭遇する、著作権についてのちょっとした疑問や引っ掛かりに対する答えから、実際トラブルに巻き込まれたときの対処法などを、100のTipsにまとめた本です。
「クリエイターのための著作権本」は近年結構多いんですが、職場向けの著作権本というのは意外となかったんです。これはもう編集者の方の目の付け所が素晴らしかったんだと思います。当初は「ビジネスパーソンのための著作権100の法則」みたいなタイトル案だったんですが、一般企業に限らず、自治体や学校などを含め「あらゆる職場」がこの本の対象だよねということで、より広めに見える「職場の著作権対応」というタイトルになりました。
そうしたターゲットを想定する以上、「ビジネスの現場で役立つ本」にすることが命題でした。そこで、カバーで「ビジネスで直面する著作権のモヤモヤを解消する」「曖昧で誤解も多い著作物利用の境界線がわかる!」と銘打っているとおり、なるべくモヤモヤさせずに、「答え」を示すことを意識して書きました。
実はこれも、著作権本の中では珍しいんです。意外と、著作権の本って「答え」を言い切らない。それは言い切るのが難しいからなんです。一見同じような行為でも、シチュエーションが異なると侵害と非侵害が逆転することもある。一口にコピー、アップロードといっても、「そんなことで誰もいちいち怒らないでしょう」というレベルのものもあれば、漫画村みたいに重大な社会問題になるものまで幅広いわけです。
だから、教科書的な原則論・一般論で書いておくのが、書籍としては無難ではあるんです。しかし、それだと現場の実感と距離が縮まらず、読んでハラオチできない。かといって、極端なケースに焦点を合わせて書くと、まぁ間違ってはいないんだけど、今度はリスク回避に偏重した内容になり、「それじゃ何もできねーよ」と読者は冷めてしまい、これまた実用からかけ離れてしまう。
そこで、原則は示しつつ、地に足の付いた現実的なアドバイスをすることを本書では工夫しました。そこは、それなりに長く企業法務で日々現場にアドバイスをしてきた自分自身の経験が活きているのかなぁ……と思います。「原則こうなんだけど、だけどこういう考え方をすれば大丈夫」「こういうシチュエーションであれば問題ない」「このラインを越えたらリスクが高まる」ということを添えてあげると、現場のメンバーの納得感は高められますね。毒にも薬にもならないお勉強みたいな見解は出したくない、というわけです。
また「現場向け」とはいえ、内容は必ずしも初歩的ではありません。基礎か、応用かということはまったく意識せず、現場がつまづくだろうなというトピックを選んでいます。「引用」「地図の利用」などの定番ネタもありますが、社内複製などに関しては一般的な通説よりも踏み込んでいると思うし、(フリー)素材配布サイトとの付き合い方についても、手厚く書いています。
あと、書き手(専門家)は著作権とは区別するけど、現場はまったく区別しない、商標や肖像権・パブリシティ権などの問題についても、ふんだんにページを割いたことも特徴かもしれません。さらに、「著作権侵害はバレなければリスクがない?」「合法でもクレームが来るかもしれないと不安」など、心がけの面についても書きましたね。
そのあたりが、他の著作権本との差別化ポイントであり、好評いただいているのかな~、と思います!!!重版で買いやすくなっていると思いますので、ぜひ本屋さんで探してみてください。