『知財部という仕事』がこのたび重版になり第3刷の発行となりました。この本は、もともと知財専門誌『発明THE INVENTION』での連載記事が元になっています。連載~単行本向けに加筆修正していたときには一貫して「企業で知財の仕事をしている人」という、非常に狭い、ニッチなターゲットを想定していました。なので、実は著者としてはこんなに長く読まれる本になるとは思っていなかったんですね。それが、意外なことにコンスタントに重版になってくれていてありがたい限りです。
実際は、企業で知財の仕事をしている方以外にも、今は別の仕事(例えば特許事務所など)をしているけど企業知財部への転職に興味がある方や、クライアントの内情を知りたい特許・法律事務所、調査会社の方などにも読まれていて、想定以上のニーズがあることが分かりました。
あと、版元の発明推進協会は知財の専門書を多く刊行していますが、法律や審査基準には定期的に改正があるし、新しい裁判例も生まれるので、数年で内容が最新の情勢を反映できなくなってくるんですね。一方『知財部という仕事』は、知的財産業務を担う職業人向けの専門書ではあるものの、法律解説書ではなく、仕事をするうえでのコミュニケーションに焦点を当てているので、内容が古くならない! コミュニケーションというテーマの普遍性を感じますね、自分で書いておきながら今さらですが。
普遍性ということでもうひとつ言うと、『知財部という仕事』というタイトル。これは私が「これこそが知財部の仕事の本質だ!リアルだ!」という気持ちをこめて提案したタイトルなんですが、早くも刊行当初から「いくらなんでも地味過ぎたのではないか……」と自分で自分を責めたものです。もっと「企業知財担当者のための実践的コミュニケーション術」みたいなタイトルの方がよかったんじゃないか……と。でも、今にしてみればやっぱり当初の気持ち通り、普遍性が出てよかったんじゃないかと思いますがどうでしょうね?(笑)
内容としては、いわゆる知財部門の「お仕事紹介」の本ではなくて、社内外からムチャぶりを寄せられたときの対応や、トラブルが起きたときにどうやって乗り越えるかなど、企業知財担当者の泥臭いリアルを描いています。
「企業知財ってこうなんだ」というのが、転職サイトなどを閲覧するよりもよく分かるし、中には、この本を読んで「やっぱり企業で働くのは自分にはムリだ。(調査や権利化に集中できる)特許事務所・調査会社の方が向いている」と、踏みとどまるきっかけにしている方もいるとかいないとか。
雑誌連載(連載は川守田昴というペンネームで「知財部さん、いらっしゃ~い。―企業知財担当者のためのコミュニケーション術」というタイトル)は、なんと今も毎月継続しており、連載15年目を数えています。このまま順調にいけば5年後には第2弾が出せるかもしれませんが、とりあえず予定はないので、既刊『知財部という仕事』をぜひ、お手に取ってみてください!あわせて、最新刊の『エセ商標権事件簿』『職場の著作権対応100の法則』『エセ著作権事件簿』などもよろしくお願いします!
友利昴『知財部という仕事』(発明推進協会)
友利昴『エセ商標権事件簿―商標ヤクザ・過剰ブランド保護・言葉の独占・商標ゴロ』(パブリブ)
友利昴『職場の著作権対応100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)
友利昴『エセ著作権事件簿―著作権ヤクザ・パクられ妄想・著作権厨・トレパク冤罪』(パブリブ)