『エセ著作権事件簿―著作権ヤクザ・パクられ妄想・著作権厨・トレパク冤罪』(パブリブ)ですが、好評につき第5刷となり、ようやく全国の書店で安定的に供給されています。2022年に発売した本ですが、コンスタントに売れており、自走しているな!という感覚です。
「訴えられたり、世間で騒動になったが、こんなものは著作権侵害になるわけない」「実際に屁理屈で著作権侵害を訴えて敗訴した人々の顛末」を説き、著作権界の「裏の教典」「トリックスター」として世に出た本ですが、逆説的に市民権を得ており、もはや著作権の定番書としての風格すら出てきました。

ここで、著者として、『エセ著作権事件簿』が、望外にも広く受け入れられた理由を分析してみました。タイトルのインパクトなども大きいですが、なかでも、「これまであまたの著作権本が応えられていなかった読者ニーズにきちんと応えたから」という理由が決定的だったのではないか……と考えています。
他の著作権本、特に実用書としての著作権本は、大抵「どこに注意すれば著作権侵害を起こさずに済むか」という予防ニーズか、「自分が著作権侵害されたときはどうすればいいか」という権利行使の手引きに関するニーズのどちらかにしか応えていないんです。「他人から著作権がらみで言いがかりをつけられたときに、どうするか」という反論の手引きに関するニーズに対する答えが、不十分だった。
著作権には感情的なトラブルが多く、かつ法理を正確に理解することも難しい。それでいて、今は誰もが創作と情報発信の主体者となれる時代です。誰もが言いがかりの被害者になることもあるし、冤罪をふっかける加害者になることもあるわけです。仮に自分や、推しているクリエイターがそうなったときに、どうするか? そんな不安や疑問に、きちんと正面から応えたのが本書『エセ著作権事件簿』だったんだと思います。
先行作品を参考にして、一定程度、感覚的に似ている作品があったとき、そこに「著作権侵害の可能性がある」なんてリスクを指摘することは、ハッキリ言って簡単です。「リスクはゼロではない」なんて、誰でも言えるだろ。それに対して「いやこれは著作権侵害にならない」「正当な表現行為である」と、誤解を晴らそうとする行為にこそ、よっぽど著作権に関する深い知見と、表現保護や文化の発展、情報流通に関する大局的な視野が求められます。そういう意味で、『エセ著作権事件簿』は、他のリスク指摘に偏重した著作権本よりも頭を使って、読者の不安や疑問に寄り添い、「こうやって堂々と反論せい!」と背中を押すつもりで書いたつもりです。
具体的な内容は、過去記事でたくさん紹介してきたのでそちらを読んでいただければと思います(こちらから見てみてください)。これからも『エセ著作権事件簿』は、自由に創作を楽しむクリエイターと、クリエイターを応援する読者の真の味方として、あなたのそばに居続けます!
私はというと、新刊の発売が続いています。『江戸・明治のロゴ図鑑―登録商標で振り返る企業のロゴ』(作品社)の刊行記念イベントが、神保町・書泉グランデに続いて、表参道・青山ブックセンターで10月21日(月曜日)に開催される予定です!
日時:2024年10月21日(月曜)
時間:19:00~20:30(開場18:30~)
料金:1,650円
場所:青山ブックセンター本店 大教室
東京都渋谷区神宮前5-53-67コスモス青山ガーデンフロア (B2F)
表参道駅 B2出口 徒歩7分、渋谷駅 (東口 / 宮益坂側) 徒歩13分
青山ブックセンターといえば、アート・デザインに強い書店。これまで法律・ビジネス分野が多い私の本を置いてくれたことなんて、かつてなかったのではと思います。書泉に続き、これまで縁の薄かった本屋さんでイベントができるようになっているのは嬉しいものです。ぜひ足をお運びください。詳細は、青山ブックセンターのイベント申込ページにて!
友利昴『エセ著作権事件簿―著作権ヤクザ・パクられ妄想・著作権厨・トレパク冤罪』(パブリブ)
友利昴『江戸・明治のロゴ図鑑―登録商標で振り返る企業のマーク』(作品社)

