ハンス・A・レイの柔らかなタッチで描かれた動物の絵が好きだ。ハンスは、動物の世界や動物園を舞台とした多くの作品を残しており、70年代~80年代にかけては日本でもかなりの邦訳が出版されていたが、一般的には妻のマーガレット・レイと共作した「ひとまねこざる(おさるのジョージ)」の作者として知られている。
そんなハンスの魅力を存分に味わえるイベント「おさるのジョージ展」(東京展/銀座松屋2017年8月9日~8月21日)へ行ってきたのである。まず驚くのが、多くが戦中、戦後期の作品であるのにも関わらず、原画、貴重な没シーンを含む草稿、書籍化されていない新聞連載漫画、当時の日記から印税報告書まで、膨大な量の資料が残っているということだ。絵本作家でこれだけの資料が残っているのは珍しいのではないか。
これは、主に絵本の文章を担当したマーガレットの功績のようだ。彼女はクリエイティブ面でも才能を発揮していたが、同時に芸術家肌のハンスを支えるプロデューサー的な役割も担っており、資料保全もそうした役割の一環だったという。こうした貴重な資料の数々は最終的には南ミシシッピ大学に寄贈され、保全が続けられているのだという。
ところで、おさるのジョージといえば、今はEテレで放送中のアニメ版のイメージがあるのかもしれないが、僕は断然「ひとまねこざる」の絵本派ですね。邦訳版で「じょーじ」表記となっている原典だ。だから僕の中では「おさるのジョージ」というより「おさるのじょーじ」なんですねこれが。
実は絵本ひとつとっても、このシリーズはバリエーションが、
- 原典たる「ひとまねこざる」シリーズ(全7冊)/岩波書店
- レイ夫妻没後の1998年から刊行、絵が原典準拠の「おさるのジョージ」シリーズ/岩波書店
- アニメ版に基づく「アニメおさるのジョージ」シリーズ/金の星社
と、3つもあるので、買う時は注意が必要だ(何の?)。
映像作品も、今日のアニメ版だけでなく、何度か映像化されているが、残念ながらあまりソフト化に恵まれていない。1980年代の前半にクレイアニメで映像化されたことがあり、これが非常に可愛いうえに、原典の世界観を上手に引き出しいて最高なのである。ストップ・モーション・アニメーターのジョン・クラーク・マシューが手掛けた”Curious George Goes to America”(~Goes to Zoo表記もあり)、”Curious George Goes to Hospital”の2作品で、アメリカでは2006年にDVDが出ているようだが、日本ではソフト化もデジタル配信もされていない。YouTube等に一応アップされているがほとんど幻の作品である。
しかも、本国版すら幻なのに、どうやらこの作品の日本語吹替版もあるようなのだ。ということは、日本でも放送されたことがあるということではないのか⁉ えっ、いつ!? どこの局で!? 調べたところ、1994年にポニーキャニオンからVHSがリリースされているようである。が、当然廃盤だ。以下は監督のジョン・マシュー自身がYouTubeにアップした断片だが、それ以外には何も情報がない。本国版も日本語版も、両方猛烈に見たい! 展示会でも一切言及がなかっただけに、僕は今、非常にしりたがりの状態になっているのである。
ひとまねこざるびょういんへいく (岩波の子どもの本)
マーガレット・レイ H.A.レイ
「ひとまねこざる」の中でも一番好き。原典の中では最後の作品(1966年)。