ブログブログ by 友利昴

自分に関する記事を書いたものです。

【七輪】東京大会組織委員会がアリアナ・グランデに仕掛けたアンブッシュ・マーケティング【五輪】

東京オリンピック大会組織委員会が、米歌手アリアナ・グランデに対して便乗商法(アンブッシュ・マーケティング)を仕掛けていたので記録しておきたい。

発端は、アリアナがInstagramに投稿した写真だ。自身の新曲「7 rings」にかけて、掌にタトゥーで「七輪」の漢字を彫ったということで、その写真である。可愛いと思う。投稿には「『七輪』は日本語で『小さいグリルキット』のことだ」などのツッコミが入ったりしたらしいが、それもまたご愛敬。

この投稿に便乗したのが東京オリンピック大会組織委員会である。前記インスタ投稿を転載したアリアナの日本版公式Twitter(上記)へ言及する形で、アリアナの投稿写真とほぼ同様の構図で、「五輪」の漢字を掌に書いた写真と共に、「『七輪』じゃなくて... 🤔🤔🤔」と投稿したのである(下記)

これが成功かスベっているかはともかくとして、驚いたのは、この投稿をしたのが、スポンサー以外の事業者がオリンピックに便乗することを異様に嫌い、広告等での「オリンピックを想起させる文言の使用」すら規制するスタンスを採っている大会組織委自身だったということだ。彼らは有名歌手に便乗して、東京大会に注目を集めようとしているのだ。自分がやるアンブッシュ・マーケティングは良いということなんだろうな~。まぁ勝手な話ではある。

組織委によるアンブッシュマーケティング

左/Ariana Grande日本公式Twitterの投稿写真(元はInstagram投稿)、右/組織委のTwitter。構図も寄せており便乗的である。

いや、別にこの件で組織委を「便乗だ!」と責めたいわけではない。むしろこれにより、合法なアンブッシュ・マーケティングは、組織委ですら悪意なく広報表現の一環として公開してしまうほど、クリーンでナチュラルな手法だということが示されていると言えよう。
余談だが、1964年の東京オリンピックでも、当時の組織委は他人がオリンピックへ便乗することを規制する一方、大会の広報活動にあたっては、阿波踊りなどの他のイベントに便乗した広報活動を展開していた。「宣伝会議」1963年12月号には、当時の組織委の広報部長自身の筆により、「金も使わず、少ない人数で、しかもオリンピック・ムードを盛り上げようという欲張ったメイ案」として「全国の郷土芸能祭に便乗して、オリンピックをPRする」と、堂々胸を張る様子が記されている。お祭り会場で東京大会のうちわを配ったりアドバルーンを上げたりしたようである。

他人のブランドやムーブメントに対する便乗は、十把一絡げに悪ではなく、法律や社内通念に照らして許容すべき正当な便乗商法もあるということだ。アリアナ・グランデと東京大会組織委のやり取りは正当な便乗商法だと思う。

そこでアリアナには、組織委のツイートに対するアンサーとして、オリンピック・シンボルにもう2つ輪を加えたマークを描いたタトゥーを増やしてもらい、「not five rings but seven rings!!!!」と投稿してほしいところだ。その時に組織委が「オリンピックに対する便乗商法にあたるので削除してください」と返信するかどうか、見ものである。

友利昴「オリンピックVS便乗商法 まやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘」(作品社)
友利昴 オリンピックVS便乗商法

アリアナ・グランデ「thank u, next」(「7 rings」収録)