ブログブログ by 友利昴

自分に関する記事を書いたものです。

∞×知財 #2「オリンピック×知財―オリンピックは誰のものか」イベントレポート

  7月29日、東京オリンピック1年前の時期に、∞×知財 #2「オリンピック×知財―オリンピックは誰のものか」を開催しました! オリンピックに対するアンブッシュマーケティングとその規制の是非をテーマとしたトークイベントです。『アンブッシュ・マーケティング規制法』の足立勝さん、『オリンピック・デザイン・マーケティング』の加島卓さん、『オリンピックVS便乗商法』の友利昴(私)が登壇し、3者の講演とパネルディスカッションを行いました。

オリンピックは誰のものか アンブッシュマーケティング

  実はこの問題を、オリンピックに対する遠慮、忖度、あるいは幻想から距離を置いて語れる論者は少ないんです。その数少ない論者とご一緒できて本当によかったと思います。当日は、忖度なしの数々のストロングな発言が飛び交いました。覚えている範囲でちょっと書きましょう。

・事実上みんなのものと思われている「オリンピック」は著名商標に値しない
・日本だけが2010年代もアンブッシュマーケティングを自粛し続けた
・「オリンピック」を禁句にするだけの企業は忖度バカ


・日本だけがアンブッシュマーケティングに寛容である
・アンブッシュマーケティング民法709条で規制できると考える
・五輪を『日本全体の祭典』として扱う広告はクリエイティビティを欠いている


・アンブッシュ対策をすればするほど市民の五輪への期待値は下がった
IOCに対してはもっと「うっとうしい」と言っていい
・自分の立場のもっともらしさを伝えるのに「ご理解ください」は気持ち悪い

……改めて書き出すと鬼気迫る感じがしますね(笑)。しっかりとしたポリシーを持った論者が、様々な観点から、多角的に論じたがゆえの発言です。でも登壇者全員、互いに刺激を受け合いながらリスペクトを以って参加できたので、とても前向きなイベントでした。もとより結論が同じ方向に収まるはずがないと思っていたので、参加者の皆さんに「正解」を持ち帰ってもらおうとは最初から考えていませんでした。

  そうではなく、なぜアンブッシュは規制されているのか? 規制すべきなのか? 本当に規制できるのか? 本当に違法なのか? 違法と考える余地はあるのか? 社会は規制とどう向き合ってきたのか? 私たちはどう向き合っていくべきなのか? などなど、本質的な問いに向き合うきっかけを作れたら嬉しいと思っていたのですが、壇上から皆さんのリアクションを見る限り、その試みは上手くいったのではないかなぁと思っています。

  以下、イベントの中身をかいつまんで。

  まずは講演パート。私からは「アンブッシュ規制でIOCはオリンピックを自分のものにできるか」と題し、厳しい規制にもかかわらず、なぜか「五輪はみんなのもの」と思わせてしまうIOCのブランド管理の問題点、そして社会の反応を提示。これを踏まえ、自粛する時代はもう終わったと述べました。

  足立勝さんは「我が国における新たなガラパゴスと題し、諸外国と日本の知財・競争法の法理、オリンピックへの意識を比較。日本はオリンピックへのアンブッシュやフリーライドに寛容さを持つ国であると考察し、その背景にメディアの報道姿勢もあるのではと指摘しました。

  加島卓さんは「オリンピックとアンブッシュ・マーケティング社会学と題し、長野大会や新エンブレムを巡るアンブッシュ(規制)に対する関係者の反応を分析し、「IOCは市民にオリンピックへの受動的な関与を求めるのか、能動的な関与を求めるのか」と問いました。

  各20分。足りないよな~。登壇者的には話足りないこともあったのではと思いますし、個人的にも、もっと聞きたい思いでしたが、3者の主張がバラバラなので、あまり長いと聞いてる方が疲れると思うのでやっぱりこのくらいですかね。詰め込み過ぎて、僕はめちゃめちゃ早口になってしまったよ。

オリンピックは誰のものか アンブッシュマーケティング

  後半は、大喜利型パネルディスカッション」。これは、モデレーターのちざたまご氏が、パネルディスカッションが不安で仕方ないと言って、悩みに悩んで編み出したスタイルです。いくつかのテーマ(お題)に登壇者があらかじめキーワードを用意して、それを叩き台にディスカッションをするというもの。悩んだ甲斐あってこれはハマったんじゃないでしょうか。独りよがりにも、予定調和にもならず、盛り上がったと思います!

  ちなみにテーマは「オリンピックは誰のものか?」、「アンブッシュマーケティングとは何なのか?」、「オリンピックにとって知的財産の役割は?」でした。面白かったのは、登壇者はかなり主張が違うのに、「オリンピックは誰のものか?」の問いには、ある程度「IOC」という言葉を使っていたところですね。だからと言ってIOCが正解という結論にはまったくならなかったのがまた面白かったんですが(その意図するところがそれぞれかなり違う)

  まぁとにかく楽しかった! 参加者は100名にのぼり、学生の方から年配のベテランまで、一般的な法務系イベントより女性の割合も高く、まさに老若男女が集まって盛況だったと思います。法務・知財畑の方が中心でしたが、特に加島さんの社会学観点の話は新鮮だったという声が多かったです。異なる視点、異なる学問領域との交わりは大事にしていきたいと思っています。

  壇上で言うことじゃなかったかもしれないですが、僕個人としては『オリンピックVS便乗商法』を書くうえで『アンブッシュ・マーケティング規制法』『オリンピック・デザイン・マーケティング』には影響を受けましたので、3人でアンブッシュ・マーケティングについて語り合うのが夢だったんです。それが叶って感無量でした。

  改めまして、ご多忙中にもかかわらずお引き受けくださいました足立勝さん、加島卓さん、ご協力頂いたサイボウズGMOブライツコンサルティング河出書房新社作品社創耕舎の皆さん、お手伝い下さった安達さんと桑原さん、お越し下さった皆さまに心から感謝申し上げます!

【関連記事】

subarutomori.hatenablog.com

subarutomori.hatenablog.com

友利昴「オリンピックVS便乗商法 まやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘」(作品社)
友利昴 オリンピックVS便乗商法

足立勝「アンブッシュ・マーケティング規制法 著名商標の顧客吸引力を利用する行為の規制」(創耕社)
anti-ambush-marketing

加島卓「オリンピック・デザイン・マーケティング―エンブレム問題からオープンデザインへ」(河出書房新社)